第四章
女教師曰く、彼は叶わない理想を抱くロマンチストである。
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る目……。いや止めろよ。
……と、俺が突っ込む間もなく、それから皆急いで帰るのだった。
そりゃあそうだ。皆は親がいて、自分の帰りを心配されているのだろうから。
俺は心配もなにも何もないのだから当然だ。当然のことなのだから、それで良いはずなのに、どうしてこんなにやるせないのだろう。……それはやる気がないだけのことか。
佇む僕がこんなに広い教室に独りぼっち。
……と言うわけではなかった。
雪ノ下雪乃は帰りの支度の最中だった。
いつも元気ハツラツとしていながら少し天然っ気もあり、たまにしつこい知りたがりな一面も持つ基本的に世間知らずのお嬢様で僕のことを昔から好きで好きでLOVEで堪らない可愛らしい彼女のことだ。どうせまた何時もと同じく依頼人にお悩みをしつこく聞き込んでしまったのだろう。はあ……こんなにかわいい彼女だけど――まったく、やれやれだぜ。人の気持ちも少しは考えろっての!(怒。
「なんだか気持ちの悪い文章を脳内で羅列してるかのような気持ちの悪い顔ね」
「この学校にはエスパーしかいねえのかよ」
ちょっとやれやれ系ラノベ主人公の真似ゴッコをしてただけでこれだよ。
まったくひでえ仕打ちだ。
……やれやれ。おかげでちょっとムラムラしてきたぜ。
「………ゆきのん」
「死ね」
ストレートだなあ……。
「実はね、ゆきのんに質問があるんだ」
「……無視なの?」
訝しげな目で俺を見つめるゆきのんに少したじろいでしまったが、少しばかり聞いて見たいことがあった。
「平塚先生に言われたんだ。お前はロマンチストのように《理想》を求めながら《リアリスト》のように冷めているってね。果たして俺はロマンチストなのかな?リアリストなのかな?どちらから選べというわけではないけれど、上手く形容する言葉ってなんだろうって思ってね」
適当に省略しつつ、俺はこんどは目を細める雪ノ下に問い掛けた。
なんかすっきりしないから、何でも良いのでとりあえず納得できる回答が欲しかったのだ。
昼の眩しい陽射しがカーテンに構わず、一直線に僕らの立っているこの世界を温かく焦がしていった。
頬に少し汗が滲み、僕が意識も保てなくなるほどの日光を浴びたところで、ようやく彼女は薄いピンク色の唇をゆっくり動かし、小さな口を開いた。
そして、フンッと、鼻で笑った―――。
「まるで童貞を拗らせた高校生のような思考ね。……笑えないわ」
「いや鼻で笑ったろうがよ……」
それも高らかに。
俺がしぶしぶそう指摘すると彼女はまた嘗め腐った顔で首をフリフリと可愛げに振り、僕を笑った。
「違うわ。これは軽蔑したのよ。鼻で笑うというのは嘲笑するという意味よ」
「もっと悪いじゃないかよ」
俺の言葉など完
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