第111話
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ルチアの質問に答える。
「わ、私達も知らない。
ビオージアからはあんな霊装があるとは聞いてない。」
その眼は嘘を言っているように見えなかった。
誰もがあの足について分からない状況で麻生はこめかみを押えながら、言う。
「クラーケン・・・海の魔物。」
麻生の言葉を聞いたのか、建宮は眼を見開く。
「何かの冗談よな?
クラーケンと言えば、過去に出てきたと言われる神話生物だ。
それがこの世に存在する訳がねえよな。」
「あれはこの星に住んでいたクラーケンじゃない。」
「ど、どうしてそんな事が分かるのですか?」
「俺にもよく分からない。
何故知っているのか、ただ言える事はあれを野放しにしていたら全滅するという事だ。」
そう言うと、麻生の身体はゆっくりと浮かぶ。
「もう争っている暇は無くなった。
あれは無差別に襲い、人を喰らう魔物だ。
争っている間に、どんどん仲間は喰われていく。
どうするかはお前達の勝手だが、後悔しない道を選ぶんだな。」
その言葉を残して、麻生は近くの『女王艦隊』に向かって移動する。
麻生が向かった艦隊は足の攻撃を受けて、沈みかけている。
建宮は麻生が助けに行くのを見て、近くのシスターに言った。
「おい、お前さんら。
もう争っている暇はねえよな。」
「な、何を言っている!?」
「このままだったら、お前さんらの仲間はよく分からない生物の餌にされるよな。
だったら、今だけでいい、協力するぞ。」
建宮の言葉に誰も否定はしなかった。
それだけ、あの足が危険だという事が分かっているのだ。
誰も否定しない事を確認すると、建宮は他の天草式のメンバーに指示を出す。
「ですが、シスター・アニェーゼはどうするのですか?
あのビオージアが霊装の準備をしているのですよ。」
アニェーゼの事が心配なのか、ルチアは言う。
ビオージアがアニェーゼをどう使って魔術を発動させるかは分からない。
だが、間違いなくアニェーゼの身が危ない事は分かる。
「それは上条達に任せるしかないよな。
あの足は我らのいる艦隊も狙う。
助けに行くというのなら、この橋の紙を渡しておく。
どう使うかはお前さんらの勝手だ。」
ポケットから紙の束を取り出して、ルチアに渡す。
ルチアはその紙の束と依然、襲い掛かってくる足を攻撃している艦隊を見比べる。
「シ、シスター・ルチア。」
アンジェレネは彼女の名前を呼ぶ。
彼女自身、どちらを選ぶか迷っている。
ルチアは眼を閉じて、深呼吸すると紙の束を袖の中に入れる。
「他の仲間を助けましょう。
不本意ですが、シスター・アニェーゼは彼らに任せましょう。」
「は、はい!」
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