マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
―《剣帝》―
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障害出ているかもしれない。
「……ぅ……っ!」
妙な鈍痛がすると思ったら脚の骨が外れていた。それすら気がつかない程アドレナリンに犯されていたのかと辟易しつつ、楽になった体を引き続き休める。
(……しかし、これは……)
速めに処置しないとマズいかもしれない。
体の体温が引いていくのを消えかけの意識で認識するも、どこから出血しているのかも分からない。
(……ごめんなさい、直葉)
そう心の中で呟いた時、温かく、優しい手が頬に触れるのを感じた。
「やれやれ、しょうがない娘だ。――神医を舐めてもらっては困る」
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脳天を狙って振り下ろされた刃を杖で受ける。樫の木の中に鉄心を仕込んだそれは見た目とは裏腹に重く、頑丈だ。
「はぁぁぁっ!!」
「くっ!?」
受けたはずの刃が霞むと視界から消える。
その時にはパーカーの脇腹辺りに二本の裂目が刻まれていた。
(50……いや、もっとか!?)
『冷静な闘争心』によって生み出された身体強化率はおおよそ普段の40倍。現在は燃費を考えてその半分、20倍程に抑えている。
というのは出し惜しみしている訳ではなく―――ぶっちゃけ40倍にした所で何も見えない。
音速一歩手前の殺意を紙一重でかわさなければならないのは変わらないのだ。
(だが、そろそろ終わらせないと姉さんが危ない……)
このままあしらい続ければ桜は体の隅々まで動けなくなる程に体力を失い、楽に無力化する事が出来る。
だが事によると、そのまま生命維持に必要な最低限のエネルギーまで食い潰しかねない。
そんな思考に集中力が削がれ、一瞬の隙を突かれる。
―ザシュッ!!
「――――――ッッッ!?」
腹部に強烈な痛み。鈍色の穂先が脇腹を貫通していた。
それでも咄嗟に体を捻ったお陰か、重要臓器にダメージは無い―――はずだ。
しかし、これは最初で最後のチャンスだ。体から力が抜けていくに任せ、地面に膝を付く。血が溢れ出て意識が飛びそうになる。
「―――眠りなさい、螢。あなたの腕を奪ったあの男は私が必ず殺す。『カタストロフ計画』も山東が潰す。何も心配する事は無いわ」
頭上で囁かれた言葉を咄嗟に理解することは出来なかった。桜から殺気が消えた、その刹那。
―ドスッ
「…………っ!?」
「油断、したな」
左手で腹を押さえ、右手で杖をくるくると回しながら立ち上がる。多少はふらつくが、立てない程ではない。鳩尾を一突きされ、戦意を刈り取られた姉を見下ろし
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