第十一話 〜空を駆ける【暁 Ver】
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一台の車に手を振っていた。見ると親子連れだろうか。助手席に座っている幼い少女が手を振り返している。
はやてはそれを微笑みながら見ていたが、放っておくといつまでも手を振っていそうな雰囲気だったので、声をかけた。
「アスナちゃん、楽しそうやな。せやけど、ちゃんと座っとらんと危ないで?」
「……や」
六課に来てからティアナとスバル以外とは殆ど接点を持とうとしなかったが、最近では皆ともよく話すようになってきた。その代わりというわけではないだろうが、我が儘も増えてきたようだ。……反抗期かとも考えたが、今更それはないだろうと思い直した。
「ちゃんと年上の言うことを聞かんと罰が当たるで?」
アスナはまるで聞いていないようだった。相も変わらず電車に初めて乗った子供のように、リアウインドウから景色を眺めていた。その数分後。少々乱暴な運転をする他車の所為で、フェイトが慌てて急ブレーキをかけた為に、アスナは後部座席から見事に転がり落ち……はやての言う通り罰が当たる事になった。
「聖王教会、ですか。管理局……というか六課って聖王教会と仲良しでしたっけ?」
桐生は丁度ユーザーから預かったデバイスのフルメンテを終え、一息入れようとしていたところだった。皺苦茶になったソフトケースから、よれた煙草を一本取りだし燐寸で火をつける。硫黄の臭いと共に、紫煙を肺一杯に吸い込むと生き返るようだった。
ボブは好き好んで煙を吸う人間の気が知れないと言うが、『工房』以外では一切吸わないし、誰にも迷惑をかけているわけではないので、好きにさせてくれと桐生は思う。
『桐生……仮にもアスナが属している組織なのだから、もう少しだな』
説教が始まりそうな雰囲気を感じ取ったのか、桐生は下手に出ること決めたようだ。ボブは説教を始めると長い上に、最後は決まって桐生に対する愚痴へと変わるのだ。
「あなたが優秀ですから。これから勉強しますよ。で?」
『仲良しと言えば、仲良しなのかも知れないね。聖王教会のカリム・グラシア女史と、ミス・八神は旧知の仲だそうだ。機動六課設立時にも力添えしたと聞いている』
「なるほど」
感心したような返答をしたものの、桐生にはさほど興味を惹かれる話題ではなかった。
『……真面目に聞いて欲しい』
「聞いてるじゃないですか。……仲良しと言えば、あまり仲が宜しくない方もいましたね、確か。レジアス……何でしたっけ」
『レジアス・ゲイズ。確かに、ミス・八神を含め彼女達を煙たがっているようだね』
「男は呼び捨てですか。武闘派と呼ばれるほど強引な方ですよね」
「噂に違わない人物のようだよ。『地上での正義の守護者』などという人間はいるが、それと同時に黒い噂が
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