第108話
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できた。
船の腹に直撃したのか、甲板全体が横へ大きく揺れる。
第二波はすぐに襲う。
今度は甲板の上のターゲットを直接潰す気か、ギチギチと音を立てて砲が上を向く。
砲口が上条達にピタリと合わせられる。
黒い穴が怪物の眼光のようにこちらを覗いた時だった。
「きたれ! 一二使徒のひとつ、微税吏して魔術師を撃ち滅ぼす卑賤なるしもべよ!!」
叫んだのはアンジェレネだ。
彼女の魔術は『十二使徒マタイの伝承』を基にした、硬貨袋を触媒とする魔術を使用する。
頭上に投げた硬貨袋から六つの翼が生え、砲弾のような速度で相手を追尾し攻撃する。
四つの金貨袋は赤、青、黄、緑、四色の翼を生やした重たい小袋が、それぞれ鉄拳のように手近なマストへ突っ込んだ。
氷の柱の根元を叩き砕かれた、巨大なマストは大きく斜めに傾いだ。
倒れつつあるマストに大量の砲弾が突き刺さった。
上条らを真っ直ぐ狙っていた氷の爆撃は、アンジェレネの一手によってかろうじて防がれる。
盾となったマストが、甲板に倒れる前に砲の衝撃で砕けた。
バラバラに散らばった破片が降り注ぐ。
破片と言っても、一つ一つが冷蔵庫より大きな物だ。
「ッ!!」
ルチアが巨大な車輪を頭上に掲げ、一気に爆発した。
大量の木片が破片にぶち当たるが、それでも全ての氷の塊を弾ける訳ではない。
撃ち漏らした氷の塊が、ローマ正教のシスター達へ向かった。
かつてアニェーゼ部隊と呼ばれた修道女の集団へ。
それを見たアンジェレネは、敵であるはずのシスター達の元へ走っていた。
「ちょ、どこに行くのです!?」
ルチアは驚きの叫び声をあげる。
ギョッとする修道女を無視して、アンジェレネは四つの金貨袋を呼び集める。
それで降り注ぐ巨大な氷を弾こうとしたが、バラバラと金貨服の布地が破けてコインが飛び散った。
マストを砕いた衝撃に、すでに金貨袋の方が限界を迎えていたのだ。
「退きなさい、シスター・アンジェレネ!!」
手を失ったアンジェレネに、ルチアが叫ぶ。
彼女が周囲を見れば、上条がこちらに走ってくるのが見える。
おそらく、アンジェレネを突き飛ばすために。
しかし、アンジェレネは下がらなかった。
アンジェレネはさらに一歩前へ踏み込む。
歯を食いしばって、一番近くにいたシスターの胸を突き飛ばした。
突き飛ばされたシスターは後ろに弾かれ、甲板の上に倒れていく。
アンジェレネは、それを確認してから身を伏せようとして、その一歩手前で、冷蔵庫のような氷の塊が彼女のすぐ横に墜落し、甲板に激突した氷が、さらに岩のような破片の雨を撒き散らし、ゴン!!と。
彼女の小さな身体が、鈍い音と共に宙を舞った。
「シスター・アンジェレネ!!」
ルチアは信じられないものでも見るような叫びを
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