第3幕 夏侯元譲
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」
曹操は素直に感心した。
あの夏侯惇にまともでは勝てないと言いながらも、戦場では諦めずに勝つ方法を探るという。
泥にまみれてでも、汚泥をすすってでも生き延び、最後には勝つ。
目の前にいる若く粗野な男は、曹の大剣をそう語ったのである。
(自分の力量と、相手との力量差を正確に把握した上で勝てないと断じる。それだけならまだしも、戦場でならいつかは勝つとまで大言を吐く。なかなか度胸はあるようね)
曹操にとって、好ましいのは生気溢れるものだった。
足掻いてもがいて、それでも前進する者が好きだった。
それこそが、『覇気』であるのだから。
「それで、ワシは確かあの『おでこ』を組み伏せてから記憶が無いんじゃが……この傷は何じゃ?」
「ああ、それね。秋蘭……夏侯淵の矢にやられたのよ」
「かこう、えん……?」
「春蘭の妹よ。姉が殺されかけて、とっさに矢を射ったわけ。胸に突き刺さったのに生きているから、びっくりしたわよ」
「胸…………てか、ワシの胴丸を矢で貫いたじゃと!? 鉄砲でも至近距離でなければ致命傷にならんというのに……」
「てっぽう?」
曹操が首を傾げる。
当然だ、この時代に鉄砲などは存在しない。
「……ふむ、やはり面白いわね。貴方は私の知らない様々なことを知っているわ。どう? その知識、その能力、この曹孟徳の下で生かしてみない?」
「む? どういう意味じゃ? ワシはすでにかみさんおるから、婚姻はできんぞ?」
「こ、こんいん!? な、何言ってるのよ! ばかじゃないの!? だれがあんたみたいなデコっ鼻を娶りたいというのよ!?」
「……? 違うのか? ワシはてっきり婿になって家を継げとでも言っておるのかと」
「貴方ね………………はあ。もういいわ。まずはお互いの状況を整理してからにしましょう」
曹操は溜息を吐きつつ、見張りに合図する。
見張りは、ゴンベエの牢の鍵を解き、木格子の扉を開けた。
「ともかく、こんなところでは落ち着いて話せないわ。城に来なさい。二人にも説明しなきゃならないしね……」
*****
「春蘭! お座り!」
「わん!」
「…………姉者」
曹操が城に戻ると、謁見室兼会議室でもある王座の間では、二人の部下が控えていた。
曹の大剣、夏侯惇元譲。
曹の名弓、夏侯淵妙才。
二人共、曹操の一族であり、曹操を主と慕う忠臣であった。
「で、華琳様……いきなり姉者を犬のように座らせた理由は?」
「その前に……秋蘭、春蘭を縛りなさい」
「え!?」
「な!?」
「いいから縛りなさい! 聞こえないの!?」
「か、華琳様……わ、私、なにかやらかしましたか!?」
「……華琳様、一体どういう
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