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センゴク恋姫記
第3幕 夏侯元譲
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――否。
 元々、ゴンベエはこうしたアクシデントの状況には、とかく弱い。
 命がかかった緊急時ならばともかく、自分の知識が及ばない状況には二の足を踏む。

 馬鹿のセンゴクは、この世界でも健在であった。

(ワシ……どうなるんじゃろ? ほんまにここはどこなんですか、ハンベー様……)

 夢で見た半兵衛の言葉。
 信長様を助けてくれ、その言葉を思い出す。

 否。
 正確には、信長の『ような』人物である。
 すっかり脳内変換で、信長のことだと誤認識していた。

(起きたら信長様がおるんじゃなかったのですか? いや、目の前に居たのはあの女童……まさか、あれが信長様? ないない……まあ、凶暴さではどっこいかもしれんが)

 信長本人が聞いていても斬られそうな事を考え、その事に身震いする。

(あの気持ち悪い男がなんぞ言うとったような……しっかり守れ? やっぱあのおなごなのか? 本当にどうなっておるんじゃ……)

 一人悶々と悩むしかない牢の中。
 その状態に変化が訪れる。

 重い扉が開く音。
 その後に響く足音に、目の前にいた見張りが身を正した。

「ご苦労……あのバカは起きているか?」
「は! 先程目を覚ましました」

 その声と共に、ゴンベエの視界に入る人物。

「あ、おそう!」

 ゴンベエの言葉に、顔を顰める少女――曹孟徳だった。

「誰が『おそう』よ! もう……せめて曹操と呼びなさいな。まったく、蜚?(ゴキブリ)みたいな生命力ね。まさかあの傷で、そこまで元気だなんて」

 曹操が呆れる様に嘆息する。
 ゴンベエにしてみれば、こんな矢傷など日常茶飯事である。

 とはいえ、鎧のお陰で致命傷は避けられたといったほうが良い。
 戦国期の当世具足は、鉄砲に対する防御として胴丸に鉄板を仕込ませている。
 その防御力のお陰で生き残れたのだ。

 というよりも、その当世具足すら貫通する矢を放った人物の力を褒めるべきであろう。

「曹操、か……まあええわ。で、ワシはなんでこんな場所に閉じ込められとるんじゃ?」
「あなた……自分が何をしたか、覚えてないの?」
「? 確か……変なおなごの名を呼んだら、いきなり怒って殺されかけたのう」
「それよ、それ! まさか春蘭の真名を呼ぶなんて……」
「まな? なんじゃ、それは?」
「貴方っ…………あ」

 驚いた顔で曹操が叫ぶ。
 曹操にしてみれば、真名という存在を知らないとは思わなかったのである。
 だが、ゴンベエが大陸の者ではないと思っていたのも曹操である。

 であれば、真名と言うものの存在も知らない可能性も高い。
 それなのに、自分は夏侯惇の真名を口にして、あまつさえ名を聞いてみろと言ってしまった。

 明
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