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世紀末を越えて
プロローグ
エンカウント・ツー
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悪い訳でもないのに。しかも保健室でもなく、何故か屋上…」
「服。」
「ん?」
「自分の、服がほしいんだって。」
「あぁ、成る程、あいつ孤児院にいるからなぁ…で?で、なんで屋上?」

 振り返ってみると、やはりその蝶が、後を付けていた。

その蝶は、友人と別れる際、僕の前に出てきたのだ。いい加減、この蝶の意図が読めて良い頃である。

ついてこいって?いいよ。

僕は黄金の蝶の後についていった。
蝶は時折僕がついて来ているか確かめるようにこちらを向きそうして僕を先導した。本当にこの蝶は僕を認識しているのだろうか。僕は敢えて蝶の進む方向とは全く逆の方向へ進みだす。するとそれを遮るように蝶は僕に立ちはだかった。
分かった、ちゃんと君についていくよ。
そう言うと満足したように鱗粉を振りまき再び僕を先導しだした。
蝶の向かう先はどんどん人が少なくなっていき、地面もアスファルトに舗装されたそれではなく、赤土がむき出しになっていた。そして林に突き当たる。生い茂る木々を縫うようにして蝶は進んでいき、僕は道無き道を枝や草を手足で退けながら進んでいった。
「ちょっと、もう少し、ゆっくりと進んでくれないかな…」
手足で草木を退けるといっても、そもそもその量が半端なものではない。木の枝が僕の顔を引っ掻き、地面の落ち葉やその腐葉土はとても湿っており、起伏もまだらで滑りやすかった。前ばかり見てもいられない。
どれほど進んだろうか、僕の前から僅かに海のさざ波の音が聞こえた。小さな山一つ分越えてどうやら島の端の所まで来てしまったらしい。先ほどまで強い風が吹いていたが、山に遮られるためか風も感じなかった。それに取って代わるように僕が進む程に霧が濃くなって来た。
その変化に気を取られ、目と鼻の先に迫った大きな蜘蛛の巣と、その中央に足を広げて張り付く、巣相応の大きなグロテスクな模様の蜘蛛に気づいた時にはもう遅かった。そのまま全身で蜘蛛の巣を突き破ってしまった。
「あっああああ、うわ、ああああああ」
蜘蛛自体はさほど苦手ではない、しかし不意なことであったし、この大きさとなるとさすがに気持悪いものである、しかも、よりによって肩にその蜘蛛がへばりついていた。
「あ!!え!?う、わああ!」
大の男だというのに、情けない叫び声を上げてしまった。反射的に蜘蛛のへばりつく右肩の反対の、左方向に飛び退く。飛び退いた先の地面の起伏に足を取られ、僕は急な勾配の坂を転げ落ちる。もうわけが分からなかった。
起き上がると僕の制服は蜘蛛の巣と、落ち葉と、泥に塗れており、迷彩服のようになっていた、幸いどこも怪我はしていないようであったが、蝶は僕を笑い、笑い声が空間に反響した。
「笑えるのかよ…なんだよおまえ…」
僕は改めて蝶を見る。その特殊な外観に今まで気を取られていたせい
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