閑話1 〜追憶の日々【暁 Ver】
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すことになるなど──── 男はまだ知る由もなかった。
「こんなところかしらね」
「ちょっぴり不安でしたけど……なんだかとっても素敵です」
素敵、か。キャロにそう言われるほど、今の自分はまっすぐ立っているだろうか。
「また違うお話も聞きたいです」
「それは、また今度ね」
「あ、あの、ティアさん」
「何? エリオ」
「そろそろスバルさんとアスナさんを……」
正座させっぱなしだったのを、すっかり忘れていた。正座を解いた二人は、待ちきれなかったように後ろ手に隠していた物をあたしに見せながら、こう言ったのだ。本当に、唐突に。
「花火やろうよ!」
アスナの部屋に置いてあるがらくた入れと言う名の大きなダンボール。アスナは頑なに宝箱と言い張っているそれから、スバルが花火を見つけ出した。線香花火と言うらしい。なのはさん曰く五月蠅くないとのことなので日も落ちた頃、他の寮組の人間も巻き込んで花火大会と相成った。
なのはさんはしきりに懐かしいと言っている。うん、いいなこれ。派手さはないけれど、何だか懐かしいような気分になってくる。そして終わった時の何とも言えない寂しさ。心が、静かになるようだと思った。
そんな感傷に耽っていると、あたしの目の前に黒い小さな塊が落ちてきた。それは煙を出しながら、ぷるぷる震えていたかと思うと、にゅるにゅると擬音が聞こえてきそうな勢いで地面をのたくった。
落とした張本人を見上げる。
「……うんこはなび」
もう一度、下を見る。地面には未だに風情もへったくれもなく、のたくっている得体の知れない物体。あたしは無言で立ち上がり、アスナの顔をもう一度見る。
「……うんこはなび」
「うんこ、うんこ連呼するな!」
「ティアもだよ」
いつもの喧噪。だけど、これが堪らなく心地よいものにいつの間にかなっていた。……兄さん。もうあたしは大丈夫だから。この娘達がいる限り、あたしはもう間違えない。だから安心して休んで? ありがとう、そして──── おやすみなさい。
〜閑話1 追憶の日々 了
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