アウターという存在
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「・・・・・・・・・これは酷い。」
「同感じゃの・・・。」
鈴蘭とみーこが立っているのは、ビルの屋上・・・いや、ビルだったものの屋上と言ったほうがいいだろうか?
巨大な・・・巨大過ぎる氷槍により、頂点から地盤までを真っ直ぐに貫かれた為に辛うじて倒壊を免れた数少ない建物である。
罅だらけで様々なものが砕け散った屋上から街を俯瞰すれば、今現在のこの状況が、どれだけ異常なものかが嫌でも分かる。
「まるで剣山みたい。」
「わしには墓標に見えるがの。」
鈴蘭には、自分の母親が裁縫をするときに使っていた剣山に見え、剣を突き立てて墓標とする文化が遥か昔にあったことを知っているみーこには墓標に見えた。
ありとあらゆる場所に氷槍が突き刺さっている。ビルは無残に破壊され倒壊し、大地は深くまで抉り出されて土砂が街を埋め尽くしている。まつろわぬ神という災害、そして地球の重力という法則が組み合わさった攻撃。どれだけ規格外の威力がこの一撃に宿っていたのかの証明であった。
キラキラとダイヤモンドダストが輝くが、この光景を見てただ綺麗だなどと思える人間はいないはずだ。人間の存在しない荒廃した世界。根源的な恐怖を感じさせる。
「【冥王】はどうなったの?」
「生きています。しかし、今はとても動けるような状態ではありません。」
鈴蘭の問いに答えたのは、杖をついて歩く老人であった。しかし、鈴蘭とみーこという超常の存在を目の前にして、全く気負っていない。少なからぬ恐怖を感じてはいるはずだが、それを表に出さないのだ。
彼の名はジョー・ベスト。北米三賢人の一人であり、世界的に有名な幻想文学の研究者であり、欧州でも並ぶものがいないほどの妖精博士であり、そしてなにより、【冥王】ジョン・プルートー・スミスを十年以上も支え続けてきた彼の右腕でもある。
規格外の存在には慣れている、ということだろう。
「危ういところではありましたが、何とか脱出に成功したようで。・・・しかし、カンピオーネの回復力をもってしても絶対安静です。今回の依頼に関しては、彼から全権を預けられています。」
「お大事にって伝えといてね。」
正直、この被害は仕方がないというよりないものだった。もし戦っていたのが鈴蘭だったら、上から降ってくる氷槍の雨など、文字通り傘を造って終わりだっただろう。
しかし、あの時点でジョン・プルートー・スミスには、効果的な迎撃方法が無かった。魔弾もあの時点で三発を撃っており、残りの魔弾を全て使用しても、あの槍の雨を消滅させることは不可能だっただろう。
この惨状は、ある意味で不可抗力だったのだ。
さて、あの絶体絶命の
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