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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第五話 敗将の思惑 敗残兵達への訪問者
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!」

 皆が溜め息をついた。
 ――そうだったらどんなに素晴らしいことだろうか。


同日 午前第五刻半 独立捜索剣虎兵第十一大隊宿営地 大隊長天幕
転進支援本部司令 笹嶋定信水軍中佐

 出された黒茶を飲んで人心地ついた笹嶋を諧謔味を滲ませた目で観なながら馬堂少佐が口火を切った。
「それで、わざわざ寒い思いまでしてこの敗残兵の敗残兵達にどのようなご用件で?」

 笹嶋は答える前に細巻を二人に渡す。
新城はそのまま火を着けたが馬堂は大事そうに細巻入れにしまった。
 ――性格の違いが見て取れて面白いな。

「その前に部隊の状態は?戦闘は可能かね?」
それを聞いて新城の仏頂面に視線を飛ばし、馬堂少佐は飄々と肩をすくめて言う
「今のままなら輜重隊相手なら目の色変えて戦えますがね。弾も飯もないとなると補給を受けないと話になりません。 補給を受けた後ならそうですね……。
後衛戦闘――殿軍なら5日程度は誤魔化し誤魔化しで何とか。」

 ――成程、状況によるか。
 陸軍のやり口には詳しくないが、それだからこそ笹嶋は聞かねばならない。
「ならば、攻撃はどうかね? 例えば相手の後方に潜り込み、伏撃するとか。」
 大隊長は目を覆って数秒考えてから首席幕僚へと目をやった。
「どうかな?」
「情報があれば可能です。兵員は半減していますが、猫が十匹います。
白兵戦では一匹で銃兵一個小隊以上の戦力になります。」
 熟練の剣虎兵が発した言葉に頷いて馬堂少佐が言葉を次いだ。
「兎にも角にも補給ですね。
 集積所では物質は余っている様ですが、肝心要の前線への補給が滞っています。
現状で我々は糧秣すら不足しています。戦場から馬の死体を持ってきても融かす為の火が使えません。夜は当然ですが、日中でも煙が目立ちますから。
かと言って、凍ったままでは猫は兎も角、人間には食べられません。
腹を壊しても此処では満足な治療が出来ませんからね。」

兵站が崩壊しているのは聞いている。
情報の混乱の所為で兵站部が輜重部隊を送るに送れない状況らしい。
「猫?」

新城大尉が答える。
「剣牙虎のことです。僕らはそう呼びます。可愛いですよ。」
 ――可愛い・・・ねぇ
半眼で笹嶋は新城の背後に寝そべっている剣牙虎に目を向ける
「まぁ確かに頼もしくは見えるが・・・」
 ――私としては可愛がるには色々と大きすぎる。主に体と牙が
「貴方々の船の様なモノでしょう。」
 新城が薄く笑みを浮かべる。
 ――そういうものか。
 笹嶋はとりあえず納得すると顔を引き締め、命じられた事を告げる。
「君達に頼みがある。」
 新城大尉が笑みを消し、馬堂少佐は飄然とした表情を変えずに僅かに姿勢を正した。
「その前に、宜しいですか?」
 大隊
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