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世紀末を越えて
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エンカウント・ワン
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何故か普段より暗い気がした。
私に、何か用?こんな感情初めて、じれったいの。早く出て来てよ。何かあるんでしょう?
「わ…たしは、、。」
声がした。
「わたし、、は、、。」
言いたいことがありすぎて何から話せば良いかわからないのか、それとも単に話し方が分からないのか、それは繰り返し同じことを言い続けながらじりじりとこちらに近づいてくる。そこで初めてその黒い物体が人の形はしている事に気づく。それと同時に人とは異なる存在であることもまた一目瞭然である。それがこちらに近づけば近づく程に、私の体は動かなくなって来くる。
「あなたは私の中で出て来た奴とは違うのね、貴方の名前は何?貴方はどういった者なのかしら?」
「私は。ヒトデナシ。絶対の、悪の権化。闘争と、進化の象徴。と。呼ばれているのかもしれない。私がここにいる意味は、私というより寧ろ私の見つけたお前がそういった存在そのものなのかもしれない。」
どこか甘い誘惑の香りがした。自らをヒトデナシと名乗るそれは幾千もの多種多様な黒い剣を展開させ、ふりかざす。あれが幻でないなら受ければただではすまないだろう。
「私をどうするつもり?」
「殺す。」
「そう。私一人を殺すために随分とご苦労なことね。」
「これは、敬意だ。」
「ふうん、私から見れば、殺されることに何の変わりもしないのだけど?」
「死ぬのは怖いか?」
「いいえ、あまり怖くないわ。」
刹那。沈黙の闇を切り裂くようにけたましい音が鳴り響く。その音は私を金縛りから解き放ち、ヒトデナシを打ち砕いた。
ふと、その音の正体が私の孤児院に一つだけ設置されている黒電話のベルの音であることに私は気づく。先ほどまでその音とは思いもしなかった。何分あの様な状況から私を救ってくれたもののため、またあれさえもひょっとすると何か良からぬものなのではと少し怪しむのは仕方のないことだろう、そういうわけで私が出ずとも、他の人が取るだろう、と思い私はそのまま布団に包まりその場をやり過ごそうとしたが、私の思惑は外れ何時までたっても誰もその電話に応じることも無く、煮えをきらした私は否応無く電話に応じることにした。いったいどうしたことだろう。
「はい。ええっと、樋泉ですけど?」

今のあなたに服が創れる?

聞いたことの在る声だった。女の人だろうか。そう。あの後もう一度服を創ろうとしたのだが、何度やっても布地が霧散し、上手く作れないのだ。しかしどうしてそんなことを知っているのだろう。私がこのことを話したことが有るのはあのひとだけ、彼が他人に話したとしても、私が服を創るなんてあくまで私の中の話であって、他人に取って重要性は無いはずなのに、この人は何者で、何がしたいのだろうか。
「はい、もう私にはどうすることも出来ません。どうやったって、生地を織れないのです
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