第三章:蒼天は黄巾を平らげること その4
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喜びを浮かべなあら兵は去っていく。稟は相方、程仲徳に顔を向けた。
「・・・風。あなたが見た太陽はどこから昇ってくるのですか」
「海原の果てから・・・それとも、遥か西方にあるといわれる、羅馬の方からでしょうか?見当もつきませんよ」
「・・・私も共に見たいですね。その太陽と、影とやらを」
二人の背後、略奪の痕が散見される街中から無垢なる喝采が響き渡った。渾身の思いを込めて今ある生を感謝する機会はこれから訪れようとも、二人がそれに浸る事は決してないだろう。自らの智謀を最上の武器とした者は知る。一時の情に全てを掛ける愚は、利用こそすれ、自らそれに染まってはならない。最果てより迫る悪意を誰よりも敏く知り、それを分析するのが己の務めでもあるからだ。
まだ見ぬ天下の英雄を夢見る者を照らしていた日は、ゆっくりと地平線の彼方に沈んでいき、空は紫紺に染まっていく。むせ返るような血臭を無視するように、やがて少女らは姿を消し、大地を駆けた戦士らは凱歌をあげて城へと戻っていく。夜闇に混じって獣達が現れて、硬直していく骸を貪り始めた。
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