暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
[3/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 あたし達が戻るとコテージのウッドデッキで八神部隊長が、渋い顔を隠そうともせずに何かを読んでいた。

「ただいま戻りました」

 八神部隊長は読んでいた物から顔を上げると

「ん」

 と、一言だけ発した。あたし達の姿を見ても、顔は相変わらず渋柿を食べたような顔だ。八神部隊長はあたしの心中を察したのか、ひらひらと手を振る。

「ごめんなぁ。地球は相変わらず物騒や思うてただけ」

 そう言って八神部隊長は、先ほどまで読んでいた物に再び視線を落とした。ああ、新聞か。

「今こうして私らが喋っとる間にも質量兵器が飛び交う戦争で、多くの人が死んどる。こっちの記事は……無職のおっさんが、近所の野良犬や猫を銃で射殺。家を調べたら拳銃三丁とライフルが出てきたそうや。動機が『強くなったような気がした』。しかも、モデルガンを改造した手作りやで。なんで無職なん? 働かんかい」

 八神部隊長はそこまで一息に言い終えると、気怠げに椅子の背もたれへ背中を預けた。強くなったような気がした、か。決して褒められたことじゃないけど、簡単に『強さ』を手に入れるには、それも一つの方法なのだろう。だけどあたしは、そんな方法は選ばない。

 あたしは持って生まれた『魔法』で誰よりも強くなってみせる。どんなに努力しても、それが報われるとは限らない。だけど、それは努力しなくて良い免罪符じゃないんだ。それに……才能に溺れることなく、それを実践している親友が、二人も傍にいるのだから。

「……なに見てんだ」

「な、何? ティア」

「なんでもないわよ。なのはさんがご実家からケーキを貰ってきてくれたみたいよ」

「あ、そや。なのはちゃんとこのケーキは絶品やからな。アスナちゃん頭に蛙乗ってんで」





 美味しいわ。あたしが選んだのは、フルーツのタルト。スバルやアスナと結構食べ歩きしたけど、全然負けてない。クッキー生地はサクサクとした食感で、単品でも売り物になりそうだ。カスタードの甘さ自体は控えめだけど、後味が濃厚。フルーツも業務用の缶詰なんて一切使ってないと言っていた。

 スバルも満足しているようだ。あたしが文才のないグルメ評論家のような事を考えていると、一人だけ黙々と食べているアスナを見て、なのはさんが不安になったのか、控えめに話しかけた。

「えっと、アスナ美味しいかな?」

 アスナが何を言うのか全員、手を止めてアスナを見ている。

「……これは、もう……なんて言うか、く」

 その先を聞きたいのだが、アスナは何事もなかったようにチーズケーキを食べ始めた。どうも美味しさを表現する為の言葉が思い浮かばなかったので、諦めたらしい。アスナには良くあることだから気にしない方が身の為だ。なのはさんは苦笑しているが、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ