第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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あたし達が戻るとコテージのウッドデッキで八神部隊長が、渋い顔を隠そうともせずに何かを読んでいた。
「ただいま戻りました」
八神部隊長は読んでいた物から顔を上げると
「ん」
と、一言だけ発した。あたし達の姿を見ても、顔は相変わらず渋柿を食べたような顔だ。八神部隊長はあたしの心中を察したのか、ひらひらと手を振る。
「ごめんなぁ。地球は相変わらず物騒や思うてただけ」
そう言って八神部隊長は、先ほどまで読んでいた物に再び視線を落とした。ああ、新聞か。
「今こうして私らが喋っとる間にも質量兵器が飛び交う戦争で、多くの人が死んどる。こっちの記事は……無職のおっさんが、近所の野良犬や猫を銃で射殺。家を調べたら拳銃三丁とライフルが出てきたそうや。動機が『強くなったような気がした』。しかも、モデルガンを改造した手作りやで。なんで無職なん? 働かんかい」
八神部隊長はそこまで一息に言い終えると、気怠げに椅子の背もたれへ背中を預けた。強くなったような気がした、か。決して褒められたことじゃないけど、簡単に『強さ』を手に入れるには、それも一つの方法なのだろう。だけどあたしは、そんな方法は選ばない。
あたしは持って生まれた『魔法』で誰よりも強くなってみせる。どんなに努力しても、それが報われるとは限らない。だけど、それは努力しなくて良い免罪符じゃないんだ。それに……才能に溺れることなく、それを実践している親友が、二人も傍にいるのだから。
「……なに見てんだ」
「な、何? ティア」
「なんでもないわよ。なのはさんがご実家からケーキを貰ってきてくれたみたいよ」
「あ、そや。なのはちゃんとこのケーキは絶品やからな。アスナちゃん頭に蛙乗ってんで」
美味しいわ。あたしが選んだのは、フルーツのタルト。スバルやアスナと結構食べ歩きしたけど、全然負けてない。クッキー生地はサクサクとした食感で、単品でも売り物になりそうだ。カスタードの甘さ自体は控えめだけど、後味が濃厚。フルーツも業務用の缶詰なんて一切使ってないと言っていた。
スバルも満足しているようだ。あたしが文才のないグルメ評論家のような事を考えていると、一人だけ黙々と食べているアスナを見て、なのはさんが不安になったのか、控えめに話しかけた。
「えっと、アスナ美味しいかな?」
アスナが何を言うのか全員、手を止めてアスナを見ている。
「……これは、もう……なんて言うか、く」
その先を聞きたいのだが、アスナは何事もなかったようにチーズケーキを食べ始めた。どうも美味しさを表現する為の言葉が思い浮かばなかったので、諦めたらしい。アスナには良くあることだから気にしない方が身の為だ。なのはさんは苦笑しているが、
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