第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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」
「そう。良かったじゃない」
「穂村さんの事は心配いらないわよ。こっちでそれとなく気にしとくから。なんだったらウチの人間を何人か付けとくし」
バニングスさんはお金持ちだと八神部隊長から聞いていたが、どうやら本当らしい。アスナはそれを聞いて糸の切れたマリオネットのように頷くと、バニングスさんと一緒に見送りに来てくれていた月村さんに視線を向けた。そしてアスナは少しだけ躊躇するように口を開いた。
──── もっと自分をすきになったほうがいい
アスナが言った言葉が何を意味するのかはわからない。その時の月村さんの樣子を考えると、よほどの事なのだろう。その後、月村さんは酷く思い詰めた樣子でアスナを伴いどこかへ行ってしまったが、戻ってきた時には憑き物が落ちたような綺麗な笑顔を浮かべていた。
今回の件はアスナにとって良い経験になったと思う。勿論、あたし達にとっても。何よりアスナが他の人に頼ってもいいんだと言うことを憶えたのは大収穫だと思う。こうして。それぞれの思いを秘めながら、あたしたちは地球を後にした。
「みんな、お疲れさんやったな。なんやえらく長い間おったような気がするけど。今日一日はオフにしてるさかいゆっくり休んでな?」
全員が動きを止めた。勿論、八神部隊長の労いの言葉にではない。……聞こえたのだ。聞いてしまった。あたし達を出迎えに来たヴァイス陸曹が、皆の様子に首を傾げながらこう言った。その答えを。
「みんな、お疲れ。どうしたんだ? ……アスナ、頭に蛙がいるぜ」
アスナの頭の上に乗っている緑色した生き物を確認すると、全員が床に崩れ落ちた。それと同時に。六課メンバーの見事なまでに息の合った叫び声が木霊した。アスナは何処まで行ってもアスナだった。……許可も検査も受けずに連れてきてどうするんだ。あたしの呟きに答えるように、アスナの頭の上に鎮座している蛙が一声鳴いた。
──── 泣きたいのはこっちだ。
〜アスナが地球へ行くお話 後編 了
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