暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
[11/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た植物らしい。何故、地球には存在しない植物が雪の代わりに降ってきたのか。ここからは、エリオとキャロの推論になる。

 エリオとキャロは自然保護隊での研修を終えたその足で地球へとやってきた。二人とも研修が終わった際に検査は受けているが、スノー・バグの種子は非常に小さく衣服や持ち物に紛れてしまった場合は発見は難しいとの話だ。

 スノー・バグは急激な温度変化により、爆発的に数を増すことが確認されていて、恐らく何らかの手段によって持ち込まれてしまったスノー・バグの種子が、風で舞い上げられた。そして、魔法によって急に下げられた温度が原因で空の彼方で増えてしまい……今、雪のように降っているというわけだ。

 あたしの話を黙って聞いていくうちにアスナは次第に顔を俯かせていった。結果的にあたし達は──── 雪を降らせることは出来なかった。

「降ってるねぇ、雪」

 さえさんの言葉にアスナが弾かれたように顔を上げた。

「……ばあちゃん?」

「ほら、こんな綺麗な雪は見たことないねぇ。それにね」


──── おばぁちゃん、雪だよ! みてみて! あれ?

──── どうしたんだい?

──── 消えちゃったの、ほら

──── 美冬? 雪を手で触ったら、そりゃぁ消えちゃうさぁ

──── ……消えなきゃいいのに


「暖かいねぇ、消えないねぇ」

 さえさんは手の平に乗った綿毛を愛おしげに撫でる。まるで──── ()()を撫でるように。何度も。……何度も。

「……ばあちゃん」

「私の家族は雪みたいに消えちゃったけど。この雪は消えないねぇ。……アスナちゃん、ありがとうね」

 あたしは、空を見上げる。あたし達が作り上げた雲はすでに無い。雲一つない青空からは──── 暖かな雪が降り続けていた。ひらひら、ひらひらと。全員の思いを込めた──── 暖かい雪が降っていた。





「やっぱり本物の雪が降った方がよかった?」

「いや、これでよかったわ」

 フェイトに尋ねられたはやては即答した。胸を張って。

「ちょっと意外かな」

「なのはちゃんは何言うとるんや。あの子らを見とったら、どっちでもええわ」

 三人の視線の先では、穂村さえを囲むようにして笑いあっている六課の面々がいる。はやては彼女達をみながら自分も輪に加わるべく歩き出す。その小柄な背中へ、なのはが声を掛けた。例え返ってくる答えがわかっていたとしても。

「はやてちゃんは思い出せたのかな。……楽しかった?」

 はやては満面の笑みを浮かべながらこう言った。先ほどと同じように、胸を張って。

「当たり前や」





「お別れは済ませた?」

「……いつでも遊びにおいでって
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ