第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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た。
意識が覚醒する。時々見る夢。夢の続きの記憶は曖昧だ。ただ……酷く泣き喚いていたのは覚えている。初めて経験した身近な人間の『死』。それは誰にでも等しく訪れるものだけれど、あの時の私にはそれを理解することは出来なかった。今更、遠ざける事も叶わない家族以外の人間から距離をとるようになったのは、たぶんこれが原因かも知れない。どうせみんな。最後は私の前からいなくなるのだから────
「……おばあちゃん」
「誰がおばあちゃんよ」
アスナは八神部隊長へ自分の心情を吐露した後、まるで吸い込まれるように森へと消えていった。バニングスさんと月村さんまで交えながら、あぁでもないこうでもないと意見を出し合ったが、結局良い知恵は浮かばなかった。三人寄れば文殊の知恵とは言うが、五人集まってもだめな時はだめなのだ。
そろそろスバルの頭から白い煙が上がりそうな頃に、未だに戻ってこないアスナが心配になった。あたしとスバルで探し回ってやっと見つけたというわけだ。大きな木の根元に座り込んで体を幹に預けている。起きたばかりなのか、いつも以上のぼんやり顔だ。さっきの呟きは……多分触れない方が良い。
「中々戻ってこないと思ったら、こんな所で寝てるし。何度も言ってるでしょう? 眠くなったらどこでも寝ちゃう癖は治しなさいって。原始人でも自分の家に帰って寝るわよ。……アスナ、頭に蛙がいるわよ」
「まぁまぁ。アスナも反省してるし、許したげてよ。ね、ティア。……頭に蛙がいるよ、アスナ」
スバルはあたしを捕まえて、アスナに甘いなどと良く言うがスバルこそ甘いと思う。喧嘩するほど仲が良いとはコイツらのことだ。
「……ティアナ」
「なに?」
「……かなしいことは忘れたほうが楽?」
「どんな悲しみかにもよるわね。理不尽に自分の身に降りかかった悲しみなら……場合によっては、忘れてしまった方が楽なこともあるかもしれないわ」
「……たいせつな人がいなくなったとき」
「アスナ。それは忘れちゃいけない類いの悲しみなのよ。……頑張ってそれを乗り越えなさいなんて言う気はないわ。人は死んだらお終いなの。だと言うのに、自分がその人のことを憶えてないなんて、それこそ悲しいじゃない。だから、あたしは絶対に忘れないし、忘れてやらない」
感情論でしかないし、あたしの言っていることは矛盾している。もし本当に忘れてしまえるのなら──── それを悲しいと思うこともないだろうから。だけど、それがどうした。感情論大いに結構。その人が安心して笑えるのなら感情論だろうが、嘘だろうがいくらでも言ってやる。……あぁ、唐突に気が付いてしまった。お兄さん。あの人もきっと──── 同じなんだ。
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