第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
シノ
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を塞ごうとするそれは丁度シノに似ていてもいた。
――っやべえ、……!――
振り返った先に二人の男が仁王立ちしていた。恐怖と絶望に足が竦む。一歩後に下がれば、彼等は一歩前進した。二人の顔に冷徹な笑みが浮ぶ。
――あ、あ、あ、……うあぁああああああああ!!――
夕暮れの町にザクの絶叫が響き渡る。殴られ蹴られ、暴行を加えた後に彼等は去っていった。全身が痛む。悔しさと痛みに涙が滲んだ。そしてそれを、一人の男が見ていた。
親も家もなく路頭に迷うザクの窮状を察したか、それとも情けを垂れてやったつもりか、必死で守ろうとしたたった一つのパンだけは、取らずに残してくれた。あんな奴等に情けを垂れられたことと、そして結局ぼこぼこにされての対価がパン一つという結果に、悔しさと情けない、という気持ちがこみ上げてくる。やがてそれはふつふつと滾るような怒りにかわり、ザクは力任せにパンを引き千切り、がつがつと貪り始めた。
食べ終える。まだまだそれは、自分の飢えを満たすには足りなかった。涙の滲む目で前を睨みつける。無力な掌を握り締めて立ち上がった。
憎しみに目をぎらつかせながら、ねぐらとしている場所へ向かう途中、不意に声が聞えた。
――見込みあるわね――
口調は女のものだが、その声は明らかに男性のものだ。咄嗟に振り返るもそこには誰もいない。幻聴かと、半ば落胆したようなそして呆れたような気持ちで振り返れば、眼の前に黒い長髪の男が立っていた。
――っ!――
何時の間に現れたのだろう。漠然とした恐怖に襲われながら男を見上げる。男は銀杏の葉っぱのような色の浴衣を纏ってそこに立っていた。沈みかけた夕陽を背にして立っている。爬虫類めいた瞳がこちらを見つめた。
――さっきの君、気に入ったわ――
その言葉で、ザクの恐怖を期待に似た何かが取ってかわった。吸い寄せられるように、一歩近づく。
――私のところにくれば、強くなれるわよ――
そう言って、大蛇丸は長い黒髪を翻して歩き出した。ついてらっしゃい、とその声が告げる。どうしていいのかわからずに、ザクは数秒の間立ちすくんでいた。脳裏で大蛇丸の言葉がリピートする。強くなれるわよという声が脳裏で囁き、誘う。
そしてザクは心を決めると、走り出した。銀杏色の浴衣の背を追いかける。
脳では依然、大蛇丸の囁きがリピートしていた。
大蛇丸は、ザクにとっては恩人なのだ。彼はザクの手に風穴を穿ち、そしてザクはその力を使って、大蛇丸の為に修行して、大蛇丸の為に戦って、大蛇丸の為に人を殺したのだ。彼は一度死の森でサスケ暗殺に失敗している。これ以上失態を晒すわけには、いかない。
左腕を勢いよくシノに向ける。
「俺を、嘗めるなァアア!」
そしてザクは、三角巾で吊り下げていた右腕を破竹の勢いで伸ばす
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ