第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
ヒルゼン
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よろしければ傷の具合を見せてくれませんでしょうか? 場合によっては強制辞退となります」
歩み寄ったヒルマを、ザクはギリギリと歯を食いしばりながら睨みつけた。瞬間、背骨の変わりに氷を入れられるような殺気を感じて思わずゾクリと身を震わす。振り返れば音の担当上忍が、殺気の絡んだ視線をこちらにぶつけてきていた。
「貴方がこの子の担当上忍ですね? 彼のこれは脱臼ですか、捻挫ですか、それとも骨折ですか? 骨折なら強制辞退ですよ」
辞退するかどうかは基本個人の自由。もう疲れた、戦いたくないという理由で辞退を選ぶ者や、昏睡状態で辞退せざるを得ない者もいれば、このようなとても戦闘出来ない状態で辞退するか、させられる者もいる。ただしこの試験中で戦闘出来ない状態という定義を明確に現すのは難しい。例えば脱臼して戦えない者もいれば、脱臼して尚戦い続ける者もいる。回復の早い者もいれば、回復に時間のかかる者もいる。若しかしたらザクは脱臼したって戦えるくらいの精神の持ち主かもしれないし、回復が早くてもうとっくに治っているかもしれないのだ。
「脱臼だよ! 俺はまだまだ戦える、邪魔すんじゃねえ」
返答したのはザクだ。獣のような目付きでこちらを睨んでいる。
「怪我したのは何時頃ですか?」
「二日目だ! ちゃんと治療もしてる、問題ねーだろ」
包帯を巻いているのは治療もしてるとイコールできませんよという言葉は眉をひそめることで代替した。場合によっては瞳術やら、精神的攻撃やらで相手を追い詰め棄権させるような者もいるから、脱臼しているからという理由での強制辞退は出来ない。
「……わかりました」
「へっ、話がわかってるじゃねーかよ?」
「ただし余り無茶はしないで。そして棄権終了後、勝っても負けても引き分けても、真っ直ぐわたくしのところにきてください。即行で医療班にいかせます」
「行けばいいんだろ、行けば?」
嘲るような笑み。ええ、と不服ながらヒルマは頷いた。ヒルマはハヤテに視線を投じる。ハヤテは頷いて、受験生たちに向き直った。
「えー、では、これより予選を始めますね。これからの予選は一対一の個人戦……つまり、実戦形式の対戦とさせてもらいます。丁度二十二名になったので、合計十一回戦を行い、えー、その勝者が、第三の試験に進出できますね」
二十四名の内、辞退したのは薬師カブトといとめユヅル。カブトが辞退したお陰で数は偶数となったわけだ。
「ルールは一切なしです。どちらか一方が死ぬか倒れるか……もしくは負けを認めるまで、戦ってもらいます。えー、死にたくなければ、直ぐに負けを認めてください。但し、勝負がはっきりついたと私が判断した場合、けほっ、えー、無闇に死体を増やしたくはないので、止めに入ったりなんかします。これから君たち
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