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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十一話 暫くそこでもがいていろ
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だな」
「その通りだ、連中は彼方此方でデモを行っている。危険なのは自分達は政府に、同盟市民に捨てられたと恨んでいる事だ。世論に押される形で出兵した、捕虜交換を反故にした事で連中は同盟市民に強い反感を持っている。政府だけではなく同盟市民に対しても不信を抱いている……」
「憂国騎士団も有るな……」
「ああ、それも有るな」

憂国騎士団、主戦派の跳ね上がり共の集団、バックにはトリューニヒトが居るともっぱらの噂の集団だ。デモ隊を非難し彼方此方で衝突している。互いに武装して流血沙汰を起こしているのだ。そして警察はデモ隊を取り締まるのには熱心だが憂国騎士団の取り締まりには消極的だ。デモ隊は国家が、同盟市民が自分達を排斥しようとしているのではないかと疑っている……。

「帰還兵だけじゃない、軍内部の将兵にも政府への不満は高まっている」
「本当か?」
「本当だ」
捕虜を切り捨てる様な政府のために誰が戦えるだろう。兵士達はヴァレンシュタインと自分達の指導者を比較し不満を感じている。政府には付いていけないと感じているのだ。私がその事を言うとホアンが“どうにもならんな”と言って顔を顰めた。

「かなり酷いのか?」
ホアンが気遣わしげな表情をしている。
「ビュコック司令長官は非常に危険視している」
「……」
「彼は兵卒上がりだ、それだけに前線で戦う将兵の気持ちは誰よりも分かっている。今の政府のために戦えと言っても兵士達は納得できないだろうと言っていたよ。彼はクーデターが起きる危険性をも指摘した……」
「なんて事だ……」

政府、軍、同盟市民、帰還兵、……それらが入り混じって反発しあっている。劣勢にある同盟が一つになる事が出来ず分裂しているのだ。このままでは帝国と戦う前に同盟内部で内乱が起きかねない。その時帝国は、いやヴァレンシュタインは一体どう動くか……。
「厄介な事になったな、レベロ」
「ああ、全くだ」



帝国暦 489年 3月 15日  オーディン  ゼーアドラー(海鷲) オスカー・フォン・ロイエンタール



「最近賑やかだな」
ミッターマイヤーが店内を見回した。 ゼーアドラー(海鷲)の中は大勢の客で溢れている。
「帰還兵だろう。何年ぶりかに再会して旧交を温めている、そんな連中が多いそうだ」
ミッターマイヤーが“なるほど”と言ってもう一度店内を見回した。

「一カ月の休暇が与えられているのだがその前に軍への復帰願いを出す兵士が多いらしい」
「あの放送の影響かな?」
「だろうな、これまでの帝国なら捕虜を労う等無かったはずだ。最高司令官の言葉で多くの兵士達が最高司令官の指揮下で戦いたい、そう思ったようだ。帰還兵だけじゃないぞ、一般の兵士達もだ。最高司令官は自分達の事を考えてくれている、皆がそう思っている」
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