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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
イビキ
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員に……第一の試験――合格を申し渡す!」

 そしてイビキはこの試験の趣旨を話し、戦場に於いて情報が如何に大切であるかを語った。そして彼が被っていたニット帽を脱ぎ捨てると、火傷や銃創など、痛々しい傷痕の残った頭が目に入る。CかDランクしかやったことのない下忍達はその拷問の痕を見て唾を呑み込んだ。これから自分たちが中忍となって赴くかもしれない戦場で待ち受けている危険を、イビキの言葉よりも何よりもその傷痕が雄弁に語っていた。
 はじめもまたその傷痕に息を呑む。彼も実の姉に傷をつけられてはいるし、それは精神的にも肉体的にもかなりの拷問だが、少なくとも姉は自分を殺す気はないし敵意も抱いてはいない。彼女が抱くのは愛情にしてはあまりに歪んだものだが、少なくとも彼女は殺す気ではないし、一定の時間が経てば解放してもらえる。
 けれどイビキは違う。彼は敵に捕まえられて拷問されたのだろう。一時の休みも許されず、水も食べ物も与えられずに。そして彼はいつ殺されてもおかしくない状況下、情報を吐き出さないように必死で。その恐怖ははじめの想像の及ぶものではない。

「……?」

 イビキの視線がマナに向く。そして彼は微笑を浮かべた。
 生暖かいその微笑に、マナは首を傾げた。

 +

 森乃イビキは、覚えている。
 狐者異一族のたった一人の生き残り、そういわれている子だ。燃え上がる家の中でしきりに泣き声がしていた。当時十六歳だった任務帰りのイビキは、正義感にも似た何かに導かれるままにその屋敷の中へと飛び込んで、そして火が燃え移りはじめた揺り籠の中のその娘を見つけた。その子はイビキを見るなり微笑してみせた。ぱちぱちと爆ぜる火の粉の中、イビキはまるで竹取翁が切り取った竹の中から女童を見つけたのと同じような驚きで彼女を連れて屋敷を飛び出した。走ってそこを離れる途中、家の崩れる音がした。
 ――回想から現実に帰る。先ほど第二試験試験官・みたらしアンコが突入に使った窓は砕け、窓ガラスが地面に散っている。それをせっせと監視員達が片付けていた。イビキはテスト用紙を回収しつつ、既に傾きかけた空を眺める。
 きっと彼等は既に同意書にその名を記して、死の森の中に入ったことだろう。

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