マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
領分
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も凄まじい力で沙良に投げ飛ばされていた。後ろで空気が切り裂かれる音がする。
「和人さん!貴方は知っていますね?これからの起こる事を」
「……ああ」
「ならば、自分の領分をきちんと弁えて下さい。貴方が守るべきなのは、お兄様や私ではないでしょう?」
和人に抱えられたまま、沙良を振り返ると、彼女は仮面を付けた黒服と斬り結んでいた。
―――一瞬、ここが現実世界なのかと疑うレベルの異常な光景。
―ギィン!!
仮想世界の作られたものより研ぎ澄まされた鋭い金属音。黒服の肩口が裂け、中に着ていたらしい帷子が垣間見えた。唸り声を上げた黒服は大きく後退していく。
「ごめん、沙良。俺……」
「分かっています。お兄様も分かっていて貴方に全てを知らせたのでしょう。……私はとても、とっても嬉しいです。貴方が私達のような者の心配を、してくれる事が……その、気持ちだけで十分に報われました」
いつしか、沙良の声は湿っぽく掠れていた。背を向け、刀を構えて2人と恐ろしい黒服の間に立ちはだかるのはまだ16歳の少女。
その体はごく微かに震えていた。
「さあ、行って下さい。奥の屋上通路の前の部屋が木綿季さんの病室です。お母様1人では脱出はままならないでしょう。行って手伝ってあげて下さい」
「……分かった。――沙良」
「はい」
「スグが……『無事に帰ってきて』って」
沙良の震えがピタリと止まった。
「……仕方の無い子。本当に……」
沙良が背中越しにクスリと笑ったのが分かった。
「……では、よろしくお願いします。明日奈さん、覚悟が無いままこんな事に巻き込んでしまってすいませんでした」
「…………沙良ちゃんは悪く無いわよ。悪いのは何も言わなかったキリトくん、とレイくん」
「……否定はしないけどさ」
通路に再び殺気が充満し、黒服が突進してくる。
「行って下さい!」
「死ぬなよ!」
「が、頑張って!」
2人は立ち上がると通路を奥へと疾走し始める。背後に怒号を聞きながら……
「…………っ」
床に沈黙させた黒服から日本刀を引き抜き、顔を上げる。
(『無事に帰ってきて』、か。随分と無茶を言ってくれるわね、直葉)
前方には5人の武人。全員が今倒した者より数段上の実力者だ。
「全く、『いかれ具合は七武挟ー』とはよく言ったものですね、山東家の方々?」
「……分家の当主候補ごときがほざきおる。我らは崇高な目的の為に生きているに過ぎん。外聞など気にせんわ」
「おや、私を知っているのですか?それでいて尚、楯突くと?身の程知らずですね」
「ハッタリ程見苦しいも
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