夏休み
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奥へと進むと、ある一つの布がかぶせられた物の前で止まった。
響は小さく笑い布を取っ払う。
そして中から姿を現したのは、全体的に黒塗りで所々鈍い銀色が光る単車。いわばバイクだった。それを見た千冬は思わず関心とも呆れとも取れるようなため息をついた。
「まったく、IS学園で初だろうな。在学中にバイクの免許を取るなど……」
「別に禁止はされてないでしょ? だったら別にねぇ?」
「それもそうだがな。状態はどうだ?」
千冬が聞くと響はバイクのサスペンションなどを確認して行き、頷いた。
「よし、問題なし。ガソリンは……まぁ途中で入れればいっか」
「問題はなさそうだな。それにしても普通二輪車とは思えん大きさだな」
千冬の言うとおり、明らかに響のバイクは普通二輪車よりも大きく見える。
「でも一応これで排気量は普通二輪車と同じですからね。特に何か引っかかってるわけではないです」
「なるほど。まぁここに入れる前、厳重なチェックをして問題はなかったから大丈夫だろう。ところで荷物はそれだけか?」
千冬が指をさす先には、響のバイクの座席の後部に縛りつけられたバックのみだ。
「必要最低限のモンだけ詰め込んだだけっすからね。……さて、んじゃそろそろ行きますかね」
響は言うとバイクのエンジンをかける。
マフラーから熱い排気が噴出し、エンジンが唸る。数回エンジンをふかすし、音を確認した響に千冬が聞いた。
「オルコットたちにはお前が帰っていることを伝えてあるのか?」
「ええ。一応住所も教えてありますし。……」
「どうした?」
急に黙った響に対し、千冬が首をかしげる。
「いえ、なんというかバイクで走ってる時に夜天月のブースター起動したらスッゲーことになるんじゃないかと」
「やめんか馬鹿者」
呆れ顔のまま千冬はため息をつく。それに小さく笑い、
「冗談ですよ、冗談」
「お前ではやりかねんからな」
「信用ねぇなぁ。じゃあそろそろ本当に行きます。また夏休み後半で会おうぜ織斑先生」
響はそれだけ告げると、バイクを走らせる。千冬はそれを見送りつつ苦笑する。
が、
その顔は一瞬にして苦悶に歪む。
「ヘルメットを被らんか馬鹿者がーーーー!!」
既に響はIS学園から離れてしまっており、千冬の怒声が届くことはなかった。
IS学園を出てからおよそ6時間後、響はやっと自宅に到着した。
「ふいー……。疲れた疲れた」
響は荷物を担ぐと玄関を開ける。
「ただいまー」
ドアを引いて中に入ると中から黒い影が飛び出してきた。その影の正体とは、
「おっかえりー響ちゃーん!」
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