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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第三話 空から女の子が?
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りたいもの《・・・・・・》、か。 

 分からず、困り果てたかのように目を閉じるロングビル。
 瞼を閉じて、闇が広がる中、ロングビルの脳裏にふと、ある光景が蘇る。
 それは、あの二人だけの舞踏会が終わった時のことだった。
 踊りを終えたシロウに、わたしはからかうように言った。

『悪党を見逃すなんて、正義の味方失格なんじゃないのかい?』  

 そんな言葉に対し、シロウはこちらも思わず笑い返してしまいそうな笑顔で。

『そんなことはない。間違いなく今の俺は正義の味方だ』
 
 笑いかけてきた時のことを。   










 士郎がロングビルから襲われていた頃……トリステイン魔法学院から少し離れた草原に、四つの奇妙な影があった。何がどう奇妙かと言えば、その四つの影―――人がしている姿勢? が、である。
 足を開き、腰を落とし、両手を前に出した、まるで馬に乗っているかのような奇妙な姿勢を四人はとっていた。どうやら彼らはその姿勢を長時間続けていたのだろう、大地を踏みしめる二つの足が、笑えるほどガクガクと揺れ、身体から吹き出た汗により、彼らが着ている魔法学院の制服がぐしょりと濡れそぼって身体に張り付いている。吹き出た汗に濡れそぼった服が身体に張り付く不快感を感じる余裕もないのだろう、ぷるぷると小刻みに震えている彼らは、もう限界とばかりに悲鳴じみた声を上げていた。
 
「そ、そろそろお、終わりにしないかね?」
「そ、そうで、です、ね、も、もうそろ、そろひが、く、く、くれ……」
「た、たし、かに、こ、このまま、だと、か、かえれ、な、なく、なりそ……うぇっ」
「…………」

 四つの人影は、水精霊騎士隊の隊員であるギーシュ、マリコルヌ、レイナール、ギムリの四人であった。

「じゃ、じゃあ、お、終わりに」
「そ、そうですね」
「そ、それでは……」
「…………」
 
 ギーシュ、レイナール、ギムリがこの拷問のような鍛錬(・・)を終えようと声を上げたが……。

 ―――…………―――

「……な、何でだれもやめ、ないの、だね?」
「そ、それ、は、こち、らの、セリフ……です、よ」
「……っお、ぅ、え……ぅぷ」
「…………」

 ―――誰も止める者はいなかった。
 だがそれは仕方のないことであったのだ。
 それはもはや条件付、いや、トラウマであったため。
 何故彼らがそのようなトラウマを得るようになったのか、それを知るにはまず彼ら―――水精霊騎士隊(オンディーヌ)の訓練について知らなければならない。水精霊騎士隊の隊員たるギーシュたちの訓練は、基本的に隊長である士郎に手により行われている。だがその訓練は、もはや訓練ではなく拷問といってもいいものであった。士郎が訓練に参加し
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