第十章 イーヴァルディの勇者
第三話 空から女の子が?
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味方』とは言えないなんて……。
何故?
シロウがなりたい『正義の味方』って……?
ぐるぐると回る、思考が回る。
一瞬だった。
だけど、間違いない。
シロウの目に過ぎったものは悲しみ。
だけど、何で?
何でそんなものが?
考える考える考える……でも、全て空回りする。
だから、何時も何かシロウがわたしの身体を床に下ろしていることに気付かなかった。
何時の間にか、シロウが立ち上がっていることに気付かなかった。
「マチルダ」
「っ?! あっ」
シロウに呼びかけられ、やっと自分が一人床の上に座り込んでいることに気付く。
慌てて後ろを振り返ると、そこにはドアノブを握りながらわたしを見るシロウが。咄嗟にわたしの口が動く。
「―――ちょっとシロウっ、あんたのなりたい『正義の味方』って、それは―――」
伸ばした指先で、シロウは笑っていた。
何処か……寂しげに。
「俺は、な、マチルダ。守りたいものがあるんだ」
バタン、と音を立てドアの向こうに姿を消してしまった。
「……守りたいものって……何よ」
一人取り残されたわたしは、両膝を開いた姿で座り込んだままぽつりと呟く。
「はっきり……言いなさいよ、もう」
シロウの最後の言葉の意味がわからず、ため息のように声を零す。
視線は、シロウが出て行ったドアに向けられたまま。
「『正義の味方』……か」
知らず口の端から溢れた言葉がかすれて消えた。
『正義の味方』。
よく聞く言葉だけど……とても―――不安定な言葉。
何故ならば『正義』とは国によって違い、街によって違い、家によって違い……人によって違うからだ。
そう……『正義』とは決して一つではない。
わたしはそれをよく知っている。
薄暗い部屋の天井を見上げる。
暗い天井。
しかし、ロングビルの目に浮かぶのは別のもの。
それは過去。
己の主のためエルフを守ろうとして死んだ父。
そして父を殺した騎士。
互いに正義があった。
どちらも主の命を守るために戦った。
どちらかが……悪だった訳ではない。
ただ、互いの正義が相いれることが出来なくて……ぶつかってしまった。
だけど、それも仕方がない。
何故なら各自がそれぞれ持っている正義っていうのは、みんな違うものだから。
どうしても相容れない。
だから、元々『正義の味方』なんてものはありえないのだ。
同時に二つの『正義』の『味方』になれないように……。
「なら、『正義の味方』って、一体何なのよ」
シロウの『正義の味方』。
シロウの……|守
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