第十章 イーヴァルディの勇者
第三話 空から女の子が?
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
開こうとしたが、直ぐに小さく頭を振って閉じてしまう。が、瞼と唇を一度グッと閉じると、唇を震わせながら、小さく呟くように―――縋るような声を―――
「あんたは……一人を救うために、これから救えたかもしれない人を殺すのかい」
―――上げた。
「すまない、な」
沈黙が満ちていた部屋の中に、ポツリと、士郎の小さな呟きが響いた。
「シ、ロウ?」
士郎の呟きに、ロングビルの戸惑った声を返した。
予想外……だったからだ。
余りにも勝手な理屈―――まだ見ぬ助けを求める人のため、今助けを必要とする者を見捨てろと―――本当に……呆れるほどに勝手な言葉。
なのに……彼の……シロウの言葉は、非難や侮蔑ではなく……謝罪だった。
非難の言葉を予想し、ロングビルの身構え硬く固まり冷えていしまっていた身体と心が、予想外の優しげな囁きにぐらりと揺れる。
「っあ」
何時も間にか、肩にシロウの大きな手が掴まれていた。
逆らえない。逆らう気のない力で引き寄せられ、抱きしめられる。
「んぅっ」
くぐもった声が漏れる。
厚い胸板に顔が当たって。
息を吸う。
口に、鼻に、彼の匂いと味が広がる。
ロングビルは、それが好きだった。
汗と油の混じった人間の―――男の臭い。
シロウの―――香り。
苦いような、しょっぱいような―――男の味。
シロウの―――味。
何度も……何度も感じたことがあるそれは……わたしにとって、もう魔法と同じ。
固く冷たかった身体に、熱が点る。
お腹の下辺りから起きた熱が、じわじわと全身を犯し出す。
無意識に、顔を押し付けてしまう。
「っは」
熱く、甘い声が口から溢れる。
驚き固まっていたというのに、身体は無意識にもっとと言うかのように、自分から身体を押し付けていた。
ぎゅっと、抱きしめる。
「ぁ」
肩に置かれていた手が、腰に回った。
肩から手が離れた時、悲しげな声が漏れ、腰に手が回ると、甘い声が漏れた。
―――漏れてしまう。
思考が―――定まらない。
ぐるぐると―――回っている。
シロウの予想外な優しげな声に、突然の行動に―――心と身体が……戸惑うように揺れ動く。
そんな時。
「なぁ……マチルダ」
シロウに声をかけられる。
とても……とても優しく。
甘やかに。
腰に回されていた手の一つを離し、わたしの頭を撫でながら、シロウは囁きかける。
「俺は……『正義の味方』になりたい」
小さな子供にするように、わたしの頭を撫でながら。
「ぇ?」
意味が分からず、戸惑った声しか返せなかった。
何で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ