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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第三話 空から女の子が?
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開こうとしたが、直ぐに小さく頭を振って閉じてしまう。が、瞼と唇を一度グッと閉じると、唇を震わせながら、小さく呟くように―――縋るような声を―――

「あんたは……一人を救うために、これから救えたかもしれない人を殺すのかい」

 ―――上げた。





「すまない、な」

 沈黙が満ちていた部屋の中に、ポツリと、士郎の小さな呟きが響いた。
 
「シ、ロウ?」

 士郎の呟きに、ロングビルの戸惑った声を返した。
 予想外……だったからだ。
 余りにも勝手な理屈―――まだ見ぬ助けを求める人のため、今助けを必要とする者を見捨てろと―――本当に……呆れるほどに勝手な言葉。
 なのに……彼の……シロウの言葉は、非難や侮蔑ではなく……謝罪だった。
 非難の言葉を予想し、ロングビルの身構え硬く固まり冷えていしまっていた身体と心が、予想外の優しげな囁きにぐらりと揺れる。
 
「っあ」

 何時も間にか、肩にシロウの大きな手が掴まれていた。
 逆らえない。逆らう気のない力で引き寄せられ、抱きしめられる。

「んぅっ」

 くぐもった声が漏れる。
 厚い胸板に顔が当たって。
 息を吸う。
 口に、鼻に、(シロウ)の匂いと味が広がる。
 ロングビルは、それが好きだった。

 汗と油の混じった人間の―――男の臭い。
 シロウの―――香り。
 
 苦いような、しょっぱいような―――男の味。
 シロウの―――味。

 何度も……何度も感じたことがあるそれは……わたしにとって、もう魔法と同じ。

 固く冷たかった身体に、熱が点る。
 お腹の下辺りから起きた熱が、じわじわと全身を犯し出す。
 無意識に、顔を押し付けてしまう。
 
「っは」

 熱く、甘い声が口から溢れる。
 驚き固まっていたというのに、身体は無意識にもっとと言うかのように、自分から身体を押し付けていた。
 ぎゅっと、抱きしめる。
 
「ぁ」

 肩に置かれていた手が、腰に回った。
 肩から手が離れた時、悲しげな声が漏れ、腰に手が回ると、甘い声が漏れた。
 ―――漏れてしまう。
 思考が―――定まらない。
 ぐるぐると―――回っている。
 シロウの予想外な優しげな声に、突然の行動に―――心と身体が……戸惑うように揺れ動く。
 そんな時。

「なぁ……マチルダ」

 シロウに声をかけられる。
 とても……とても優しく。
 甘やかに。
 腰に回されていた手の一つを離し、わたしの頭を撫でながら、シロウは囁きかける。

「俺は……『正義の味方』になりたい」

 小さな子供にするように、わたしの頭を撫でながら。

「ぇ?」

 意味が分からず、戸惑った声しか返せなかった。
 何で
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