第十章 イーヴァルディの勇者
第三話 空から女の子が?
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みたけど結構つかえるし勉強にもなるわよ。かたい報告書ばかり読んで固まった頭や身体を、これでも読んで少しは柔らかくしたらどう?」
「……『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』? ……何だこれ?」
目の前に掲げられた本の題名を口にして呆然とした声を上げる士郎。
呆れた声を上げる士郎に、しかし、ロングビルは全く気にせず、聞いてもいない本の内容を喜々と言葉にする。
「この前、シエスタが随分熱心に読んでいるのを見てね。で、内容を聞いたら中々面白そうだと思って借りたのよ。一章もいいんだけど、やっぱり二章からが本ば―――」
「―――いやいや、俺が聞いているのはそういうことじゃなくてだな」
「二章でね。このマダム・バタフライがお気に入りの騎士を自分の部屋に呼ぶのよ。で、そこでこう言うの『お前が望むやり方で、このわたしに奉仕しなさい』って」
「いや。いやいやいやいや……だから俺が聞いているのは―――」
「そう命じられた騎士が一体何をしたと思うっ!? それがも―――」
「待て待て待て待てッ!!? 何を言おうとして―――っひ?!」
薄暗い部屋の中でもハッキリとわかる程顔を真っ赤にしながら顔を寄せるロングビル。慌てて振り返った士郎は、冷や汗をまき散らしながら何かとんでもないことを言おうとするロングビルの口を両手で塞ぐ。
だがしかし、士郎に口を塞がれたロングビルは、一瞬戸惑った顔を見せた後、直ぐにニヤリと意地悪い笑みを浮かべるとペロリと自分の口を塞ぐ士郎の手の平を舐め上げる。動揺していた時に不意に受けた濡れた感触に、士郎は虚を突かれ少女のような悲鳴を上げてしまう。
「っ?! と、痛っ?!」
結果―――咄嗟に両手をロングビルの口から離した士郎は、その勢いが強すぎたのか椅子から転げ落ちてしまう。
士郎が椅子から転げ落ちると言うことは、士郎を背後から抱きすくめていたロングビルも同じく床に転げ落ちてしまうのだが、
「……ふ〜ふ〜ふ〜……シ〜ロ〜ウ〜」
何がどうなってそうなったのかはわからないが、士郎と共に床の上に転げ落ちたロングビルは、
「ちょ、おい、ロングビ―――」
床の上に仰向けに転がる士郎の上に、馬乗りに乗っかっていた。
「ね〜ぇ〜……シロウ……」
士郎の上に馬乗りに股がるロングビルは、ゆっくりと身体を倒し、しなだれかかると、そっと伸ばした人差し指の先を士郎の唇に当てる。
「わたしたちって今、この部屋にふたりっきりよね。で、何?」
顔一個分の距離で見つめ合いながら、ロングビルがニコリと士郎に笑いかける。
士郎は一瞬呆気に取られたように目を丸くしたが、直ぐに目尻を曲げると優しく目の前の少女の名前を呼んだ。
「俺の身体から離れてくれないかな『
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