第九話 〜アスナが地球へ行くお話 前編【暁 Ver】
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った。アスナの家とは違って、何処となく郷愁を誘うような気分にさせる。この気持ちはいったい何だろう。割と広めな庭の片隅には塗装のはげたブランコ。久しく動かしていないのか、錆び付いたその姿が漕いでくれる人を待っているようで、何処となくもの悲しかった。
生け垣の隙間から恐らく居間であろう部屋が目に入る。他人の家を覗き込む行為に今更ながら気が付いて、慌てて視線を逸らそうとする前に──── 目に飛び込んできた光景にあたしは時を止められたかのように固まった。スバルもあたしの様子を怪訝そうに見ていたが、つられるようにあたしの視線の先を見て同様に動きを止めた──── あのお馬鹿、人ん家で飯食ってやがる。
アスナの瞳を捉えて離さない料理は、焼き鮭に出汁巻き。里芋の煮っ転がしとお味噌汁という典型的な和食だった。偶然にもアスナが桐生に教えて貰いながら憶えた料理ばかりだ。脂の乗った鮭は噛むと口いっぱい旨味が広がる。ほこほこした里芋は味が良く染みていた。化学調味料のえぐ味がしない味噌汁は優しい味がした。
「アスナちゃんは強いんだねぇ。だけど、喧嘩はいけないよ。……おいしいかい?」
「……はい」
六人いた学生達を僅か十秒足らずで沈黙させたアスナは全員に正座をさせた挙げ句、この料理を作った年老いた女性──── 穂村さえと名乗った老婦人へ謝罪させた。……さえは恐縮しきりではあったが。その後、何故かアスナは食事に誘われたのである。
「こう見えても若い頃は、定食屋の看板娘だったんだよ。ありゃ、お客さんかねぇ。ちょっと待ってておくれ」
生憎とアスナにはわからない言い回しだった。看板でも持って歩いてたのだろうかとアスナは考える。後でティアナに聞こうと思いながら出汁巻きへ箸を伸ばした時。
<随分と美味しそうなもの食べてるわね、アスナ>
地獄から響いてくるような念話が聞こえた。居間から玄関へと視線を動かすと、腕を組んだティアナと、笑みが若干引きつっているスバルがいた。
「……私はアスナではありません」
「じゃ、誰なのよ」
「……アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアといいます」
「長いのよ、どこの貴族だ。ていうか、アスナって入ってるわよ」
「……お姫様な?」
「イイカラ、セツメイシナサイ」
現地時間、AM 10:32。桐生アスナ──── 確保。
「何をしたのか、わかってるの? 訓練をサボるのと理由が違うのよ。だいたいあんたはね」
あたしの小言を聞き流しながら、途中だった食事へと戻ろうとするアスナ。
「人の話を聞きなさい」
いい加減、こいつをどうしたものか考え倦
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