第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
ヒルマ
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からといってなんなんです? その前に彼が忍びになれなくなったり、死んでしまったりしたら貴方はどうするんですか? 犬神の力を上手く利用できなかったら? 生徒の無事を想うのも教師の務めです。あの犬神は本当に命取りになります。犬神の心臓を貫かれたら、即ちそれはユヅル君の死を意味しています。それに彼のあの不安定なチャクラ。あのままでは……! せめてあと一年待ってください!」
途中からヒルマの顔は、不安と焦燥、恐怖の入り混じった顔つきになった。口調も嘆願するものへと変じている。ハッカは眉根に皺を寄せたままだ。だからなんだとでも言わんばかりの顔をしている。この人本当にわかっているのか。ヒルマの声が震える。
「わたくしの母は、犬神持ちに殺されたんです」
ぞっとするような声がヒルマの喉から搾り出された。白い目がぎらぎらと異様なまでの光を放つ。忘れたことはない。母親のあの無残な死体を。何度も何度も夢にみた。今でもまだ、夢に見続けているあの無残な体。どくんどくんと、まだ完全に死んでいなかった母親は痙攣を繰り返していた。あの日ヒルマは恐怖に泣き続けたのを覚えている。
「ユヅル君が試験の間、他の試験生を殺されないと言い切れますか? 試験官達に影響を及ぼさないと言い切れますか? ねえ、ハッカ上忍。ユヅル君のあの不安定なチャクラはいつかきっと他人に害を齎します! ……火影さま、どうか……!」
もう見たくない。他の誰かがあのようにおぞましい姿にされてしまうのを見たくない。医療忍者になろうと決めたのは全てあの母親の死体を見たからだ。もう二度と誰もあんな姿にはさせたくなかったのに。
「それでも私は彼を試験に参加させます。私は彼には十分その能力があると信じている」
ハッカはあくまで冷静だった。やめてください、とヒルマが首を横に振る。マナさんやはじめ君だって被害に合いかねないのに! 悲痛な叫びをあげるヒルマに、三代目がトドメをさした。
「……よかろう」
「三代目!!」
「……ただし試験官には、その力が発揮された場合、即座にいとめユヅルを殺す許可を下す」
ハッカとヒルマは目を見開いた。言った三代目の顔も沈痛だ。彼とて木ノ葉の、輝かしい将来を持っているであろう下忍の死を望んではいないのだろう。ただ彼が里の脅威になるなら、彼は他の者達を優先せねばならない。数秒してから、落ち着き払ってハッカが言った。
「了解しました」
暫くしてから躊躇いがちに、ヒルマが口を開いた。
「……わたくしも了解致しました。……三代目、一つお願いがあります」
「言うてみよ」
火影に促され、ヒルマはキッと顔をあげる。その目には決意の光が閃いていた。
「わたくしに、いとめユヅルに封印術を施す許可を」
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