第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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もぶっ飛ばされていたことを思い出し、ヒアシは改めてネジはヒザシの息子なんだと実感しながら、遠い目になった。
ヒアシとヒザシ、ネリネが十代のこと――三十年も前のことだ。もうそんなに昔か、とヒアシは年月の流れの速さに溜息をつき、僅か二十一にして死んでしまったネリネとその夫、そしてネジが四歳の頃にやはり雲のかなたへと向かってしまった弟の命を悼んだ。
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「わあ、去っていったなあの人達」
「げほっ、げほ」
僅かの間咳きこんでから、何しに来たんだとマナを睨みつける。見舞いだよ見舞い、さきもいったでしょーと彼女は軽い調子で返してきた。
「ヒアシさんってさ、ネジ先輩と血ィ繋がってんですか? なんか未来形ネジ先輩って感じがします」
「……それは大人になった俺がヒアシ様のようになる、ということか?」
マナの発言に怪訝そうな顔をして問いかけると、マナはうーん、と首を傾げた。
「――というよりも、ヒアシさんがネジ先輩のような少年だったんじゃねえのかなあ……? うーんと、未来形ネジ先輩ってか寧ろネジ先輩が過去形ヒアシさん、ってな感じ?」
「……はあ? ……まあ、血は繋がっている。俺の伯父だ」
宗家とか言ってましたよね、つことはあの人達日向宗家なんすか! あーあ、さっさとぼったくっとけばよかったのに、アタシってば惜しいことしたなあ。ぐちぐち呟きだすマナを睨みつけて、淹れたばかりのお茶を飲んだ。喉がひりひりとする。お茶を飲むと逆にそれが強調されるようで気持ち悪い。
「ネジ先輩って、あの人たち嫌いじゃないんですか」
図星をつかれてドキッとした。なんで、と思わずそんな言葉を零す。
部外者のマナに、食以外に興味を持たないマナに気付かれるほど、自分はあからさまだっただろうか。
「だってネジ先輩の顔、嫌いな食べ物を目の前にして、でも食べたくないって言えない顔でしたもん」
「……はぁ?」
相変らず食べ物を用いたその表現に呆れつつ、しかしそれは納得できた。確かに自分は彼等が嫌いで、でも嫌いとはいえない。言える立場ではないし、自分の生死は彼等に握られているのだから。
「ねー、ネジ先輩」
「何だ?」
地面に寝転がって煎餅を頬張りながら、マナが黒い目をこちらに向けてきた。眉を僅かにあげると、目尻の切れ込んでいる目が少しばかり大きくなったかのように見える。傍で困り顔の紅丸もこちらに視線を向けてきた。
「アタシの両親って、どんな人だったと思います?」
ひどく真剣にその後輩は問いかけてくる。黒い目はまるで、ネジが彼女より一年早く生まれたからマナよりもずっとずっと多くのことを知っているとでもいうようで。勿論脳味噌が胃にあるようなマナに比べればネジが知っていることはずっと多い。けれどマナの
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