第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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ているのかもしれないが、しかしだからといってわざわざ見舞いにきたり贔屓したりするような宗家ではないし、ネジとて宗家とはあまり会いたくない相手だ。仲がいいとはとても言えない。
つまり見舞いにくるというのは建前で、彼らはその噂の真否を確認しにきたのだ。日向始まって以来の天才が公共の場で就学前の少女に柔拳を用いる――というのはかなりの醜聞だろう。
まあ、店で柔拳といったら誰かさんしか思いつかない。……成る程こうハナビと比べてみると、この女ハナビよりも少しだが背が低いみたいだ。就学前に見えても無理はあるまい。
「――俺は、誓って“就学前の”少女に柔拳を用いたことはありません」
「……そうか?」
「はい」
訝しげな目を向けてくる宗家に腹が立ってきた。日向の栄誉。日向の掟。日向の血継限界。日向の血。日向の宗家。日向の分家。日向の呪印。瞼が重くなってくる。何があっても憎き宗家の前でうたたねをするとかそういうわけにはいかない。ネジはぐっと拳を握り締めた。こっちは病人なんだぞと心中悪態をつく。悪熱と寒気で視界がぐわんぐわんとした。
「だがこれを実際に目撃したという者もいるのだ、日向分家に」
「……その方はこの場に?」
「いや、今は長期任務で里を出ている」
更にその男の口から出てきた分家の名前にネジは悪態をつく。
――そいつは狐者異マナを知らないただの馬鹿だ!
二十代もあれば、狐者異を知らない者はない。その男の口から出てきた分家は確か今年で三十歳、恐らく狐者異マナの存在は知っていてもその容姿は知らないのだろう。
「あ、それってアタシのことじゃね?」
何テンポも遅れてからの、マナの能天気な台詞にネジは固まった。眼前のヒアシも固まる。その傍の男たちも固まり、ハナビだけが不思議そうな顔をしていた。
「……そ、そうか……。就学前というわけではないのだな、ならよかった……ね、ネジよ、体を大事にするんだぞ……」
ヒアシが目を右に左にキョトキョトさせつつそう言って、強張った笑顔で立ち上がった。他の者たちもそれに続いて立ち上がり、父に促されハナビも立ち上がる。はい、とネジは突然のことに驚きつつも、頭を下げて彼らを見送った。
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「父上? ……どうしたのですか?」
父達の態度の変わり様に驚いていたハナビは、ネジの家を出るなり直ぐにそう問いかけた。
「いや……な。狐者異ならば仕方あるまい」
言いながらヒアシは、ヒザシを介して知り合った以前マナの母――狐者異ネリネが接近してくるのを白眼で捉えるなり自分とその身辺の食べ物を守る為にチャクラを放出していたことを思い出す。そしてそれがヒアシの八卦掌・回天の完成に繋がったことも。
「……母が母なら、娘も娘か……」
ネリネがヒザシに
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