第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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検査が終わりました」
そのタイミングで、入ってきたのはマスクをつけたネジとにこにこ笑顔のヒルマだった。
ネジの頭は俯きがちで、黒い髪は僅かに乱れ、頬も上気している。白い瞳もとろんとして眠そうだ。
「そうか、どうだった?」
「はっろーネジ先輩。だいじょぶかー?」
ヒアシがヒルマを見上げる。地面に寝転んで煎餅を食べつつマナが手を振った。その瞬間、俯きがちだったネジの頭が弾かれるように跳ね上がったかと思うと、瞬く間にその指先がマナの点穴を貫いた。
「うぐっふぉお」
「白眼を使わず点穴を見切るとは……さすが日向始まって以来の天才!」
ヒアシの傍に立っていた男が感銘に撃たれたような顔つきになる。点穴の位置を記憶しているだけです、と痰の絡んだ喉からネジはそんな言葉を発した。因みに記憶したのはマナに八卦六十四掌を繰り出した時だ。
「……ネジ先輩てめー元気だな……ッ」
「お前は人様の家でっ、しかも宗家の前で何をしているっ! ……ヒアシ様、ハナビ様、俺の後輩が無礼を働き、すいませんでした……!」
土下座したネジの横顔に、マナは一瞬違和感を覚えた。こんな顔、どこかで見たことがある。なんて言えばいいんだろう。
「いや、構わん。お前が狐者異の者と知り合いだったとはな……」
「任務でご一緒したんですよー」
土下座したネジの後ろ、日向宗主相手に親しげに口をきくマナ。土下座したまま、ネジは白眼を発動するなり左手を持ち上げ、そして後ろに向かって突き刺した。マナの点穴は再び貫かれた。
「……ヒルマ」
「はい。そうですね、さすが疫鬼にやられたというだけはありますね。一週間やそこらじゃ治らないかもしれません。――お薬を調合しますので、出来るだけ喋るのを控え、薬をちゃんと呑み、そしてちゃんと静かに休憩を取って、水分を補給すれば治るはずです。あまり無理してはいけませんよ、そして冷たい水もいけません。いいですか?」
ヒアシに見られて、ヒルマはネジにやってはいけないことなどを伝えた。ネジはこくんと頷いて喋るのを控える。その時不意に、一人の日向の男が口を開いた。
「ネジよ。お前が店でアカデミー就学前の少女に対し柔拳を用いたという噂が蔓延っている。それは真か? ――正直に答えよ。これは日向家の名誉にもかかわる。……よりにもよって就学前の少女に、公共の場で柔拳を用いるとはな……」
「え? っつこたぁ公共の場じゃなきゃいいのか?」
溜息をつくその男に、ぽかんとマナが見当はずれな問いをかける。ネジの指が更にマナの点穴を貫いた。
成る程、とネジは上手く回らない頭で納得していた。それが死病でも無い限り、宗家が一分家の見舞いにくるなんてことがそうそあるはずもない。この場合ネジが宗主ヒアシの甥であることも関係し
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