第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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しいのでは? あ、因みに先ほどいったの全部ハナちゃんに緘口令しかれてるものばっかなんで、彼女には内緒ですよ。これでも一応ハナちゃんに惚れている身でね、余り嫌われたくはないのです」
なんて自分勝手な理由だろう。この男、口がかなり軽い。姉に言いつけてやりたい衝動が一気に湧き上がったが、それ以上に姉がこんないらんことを全部この男に打ち明けたりしていたことに腹が立った。おまけに姉に惚れている、だと?
「一目惚れという奴ですかね。アカデミー時代、白眼の修行中に偶然見つけたんですよ、子犬と戯れる美少女を……! まあ、そういうことですので。あ、僕が彼女に惚れているということは僕と君とのひ・み・つ、ですからね、キバ君。感謝します」
にこりと笑い、スキップで去っていくヒルマに、キバの中にかつてない殺意が燃え上がった。
「……あいつだけにはっ、姉ちゃんやらねえ……! あいつが俺の義理の兄になるとか、そんなこと俺の鼻がまだ利く内は許さんぞっ!」
吠えるキバに、ヤバネとマナは顔を見合わせてにやっと笑った。
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ぱくぱく羊羹を食べていたユヅルは、病室に入ってきたマナを見るなり慌てて残りを口に押し込んだ。
窓際には色とりどりの花が入ったバスケットだ。ユヅルに好意を持つ少女が頬を染めながらそれを持ってくるというシーンがまざまざと頭に浮びそうな可愛らしい花で、バスケットにはピンクのリボンが結ばれている。たぶん、はじめだ。
机の上には甘栗甘の詰め合わせ、淡いブルーの兵糧丸に「根性」とかかれた錘が転がっている。
「見舞いにきたぜー」
どかっとベッドの脇に腰を下ろすマナに、ありがとうとユヅルは苦笑気味に笑う。黄色いカチューシャに纏められた長い白髪が風に吹かれて揺れた。
キバとヤバネも、適当に椅子を見つけて座る。
「ヤバネ、ええっと、任務のお代、ちゃんと届いた?」
「届いた。父ちゃん、お医者さんに見てもらったよ。薬ちゃあんと飲めば治るってね。そんで、“あの疫病神も少しは役に立つな”とか言ってた」
「は? なんだよそれ」
キバが眉根に皺を寄せる。ユヅルとユヅルのとーちゃん、仲がわりーの。そう耳打つと、ふうん、とキバはあまり納得していないような口調で呟いた。
「わかんない? これさ、父ちゃんが今ユヅルに言える最大級の褒め言葉だよ」
最大級の褒め言葉がそれか、と思わんでもないが、何年間もずっと続いてきたこの溝はそう簡単には埋められるものではないだろう。ヤジリにはこれがユヅルが稼いだ金だとは教えずに医者に診てもらった。あのお金ね、ユヅルが稼いできたものなんだよ、そう教えた時のヤジリの表情はかなりの見物だったのを憶えている。
「そんでね、ユヅルが入院してるって聞いたらね、ワシはいかんぞい
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