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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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のようなものだ。
 後悔していたはじめの耳に入ってきたのは女中達の話し声だった。彼女たちの会話の内容によると、初の女装遊びが始まったのははじめが三歳、ひとつが二歳の頃の話。ひとつが死んだのは八歳、つまりひとつは六年間苦しみ続けたことになる。
 だからはじめは、それから六年間姉のいうこと何一つに逆らわないことにした。

「……そっか。お前のオネエサーマもすげえな」
 
 苦手なものから逃げ出して、無意識であったにせよなかったにせよひとつにすべてを押し付けてしまったはじめが悪くないとは言えないけれど、でもそれが人間だ。苦手なそれが逃れられるものなら、そして逃れていいものなら逃れだそうとする。それが人間なのだ。マナだってなんでも食べる割にグルメなのだからゴミ箱漁りは嫌である。
 弟を一人自殺させといてそれでも懲りない初も初だとは思うが。

「誓いをたてたのが九歳だから……今は折り返し地点だ」
「……忍耐強いなあ、お前も」

 そう溜息をつくと、はじめの灰色の目が笑ってるみたいに僅かに輝いた。
 口元も僅かだが緩んでいる。はじめが笑うのをあまり見たことはないが、笑ったらきっとかわいいんだろうなと思った。

「あーっ、マナじゃない! あれ、誰それ? はじめの姉妹か何か?」

 明るい声が聞えた方向へと視線を馳せると、いのがにこにこ笑顔で手を振っていた。その隣には相変らずめんどくさそうな顔つきのシカマルと、ポテチを頬張るチョウジの姿がある。

「えーっと、いや、私、はじめ・・・・・・むぐっ」
「はじめのいもーとだよ! 似てるだろー?」

 はじめ本人だ、と言いかけたはじめの口を塞ぎ、笑顔で言ってみせると、へーっ、妹さん? すっごい似てるのねー! といのが目を輝かせた。

「ま、そのままいつまで隠し通せるか頑張ってろよ、“特に無い”はじめくん」

 にたっと嫌味たっぷりに笑い、自分の傍から駆け去っていくマナに、暫くあんぐりとしていたはじめだが、すぐさまその唖然とした目付きは恨めしげなものへと変じる。

「名前はなんていうの? ほーんとかわいいのねー」
「えっと、一文字はじ……じゃなくて、はつ」
「はっちゃん? 可愛いわね!」

 きゃあきゃあ笑ういのに、はじめは改めて恨めしげな視線を去っていったマナの方に注ぐのだった。

 +

 僕の兄弟――
 そう言う兄の顔はいつも苦笑気味だった。「僕の兄弟」、彼の中でその言葉の前には括弧が入っていて、中にはこう書かれてあったのだろう。「僕の(腹違いの)兄弟」、と。
 きっと兄は自分のことをどこかの娼婦が父と産んだ憎たらしい子供くらいにしか思っていなかったはずだ。その母による洗脳は徹底していたし、その母が洗脳していてもしなくても、兄はきっとそう想っただろう。

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