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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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じゃあ仕方ないね、他を当たるかといいつつ肩を竦めた。

「貴女にしては諦めがいいですね、珍しく。……ところで疑問に思っていたのですが、いとめユヅルと狐者異マナの監視なら、はじめ様にお任せすればよいのではないでしょうか」
「んー、無理無理。初さんが山吹くんのことあんまよく思ってないって知ってるでしょ? それにはじめくんなんて初さんに虐待されたらころんと寝返りそうだし、拷問されたら色々白状しちゃうかもだし。あの脅威な姉がいなければそれなりに使えるんだけどねー」

 面白いなあ、とユナトは呟きながら、テンテンが去っていった先を視線で追う。

「私の手駒になってくれなかったのはきみが始めてだよ、テンテンちゃん。ますます興味が湧いてきたなあ」

 少なくとも、力ずくでキミを手なずけたいと思うほどには。
 くすりと笑うユナトを眺めて山吹は小さく溜息をついた。知っている、ユナトは手駒にした誰も信じていないし、敬愛する三代目だってそこまで信じていないし、上司だったダンゾウだって、元チームメイトだったハッカやガイだって信じていないのだ。ユナトは自分しか信じないし、自分にしか気を遣わない。ある意味楽しい人生なのではないかと山吹は一人思った。他人に気を遣わない人生なんて。

 +

 慌てて出てきたらしいはじめは服装こそいつものもので顔の化粧も落とされていたけれど、口紅を落とすのだけは忘れたらしい。ほんのりとした赤の口紅がはじめの顔の女らしさを倍にし、傍目に見たらはじめの双子の姉妹かとでも思いそうな風情だった。

「マナ、……お前、どうして姉上にやり返さないのかと聞いたことがあったな」
「おー、あったな」
「……それは私が、六年間決して彼女に逆らわないという誓いを立てたからだ」

 はじめには一つ下の弟がいた。
 双子だと間違えられるほどに顔の似たその弟は、一文字ひとつと言い、はじめよりも顔の輪郭が柔らかく、はじめより尚女らしく、そして病弱だった。
 修行も出来ず、アカデミーにも通えないほどに脆弱な弟とはじめとを二人一緒に女装させていた初は、取り分けひとつがお気に入りだった。アカデミーに入る前は父一矢との修行、アカデミーに入ってからは修行と宿題、予習などの口実を遣って、はじめは度々初から逃れていた。
 すると自然、初の矛先はひとつに向いた。もとより気に入っていたひとつ。アカデミーにもいけず修行も出来ない彼は初の手から逃れることが出来ない。初にとってひとつは恰好の獲物となった。
 そしてひとつは八歳になったその年に、首を括って自殺した。
 その時のはじめはひどく後悔した。もし自分も一緒にいれば、ひとつだって自殺しなかったかもしれない。苦しみを分担できる相手がいれば、ひとつもここまでされなかったかもしれない。ひとつが死んだのは私の所為
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