XI
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、バーテンさんの言ってたことがモロに当たってしまった。
今の裏瀬くんに冷静さはもう欠片もない、あるのは激情だけ。
「待て! それは私が無理矢理ここへ来ただけで彼らは――――」
「ごちゃごちゃペラ回してんじゃねえよ!!」
桐条先輩の細い首に裏瀬くんの手が押し付けられる。
そのまま壁に押し付けられた先輩が小さな呻き声を上げ、真田先輩が止めに入ろうとするが……
「裏瀬お前!!」
「――――動くな真田、コイツの首圧し折るぞ。桐条の御嬢様だか何だか知ったこっちゃねえ」
「…………ッッ!」
誰一人動けなかった。
人間に本来備わっているはずの傷付けることへの忌避感など彼にはない。
冗談抜きでこの場に居る全員が死ぬかもしれない。
「……しの、話を聞け」
桐条先輩の腕が自分を掴んでいる手首を掴む。
それによって拘束が緩み激しく咳き込む先輩。
だが、その目は真っ直ぐ裏瀬くんを見つめている。
「ここで、起きたことは……誰にも口外させない。万が一漏れようと、桐条の力で揉み消す。
マスコミであろうと警察であろうとあらゆる圧力を以って消させてもらう。
だから……冷静に考えてくれ。彼女や江古田を、非合法な手段で罰する必要はない。
我々が山岸を救い出せばいいだけだ。報いは十分受けただろう……?」
苦しそうにしながら、それでもハッキリと桐条先輩は告げる。
…………何とも強い人だと思う。
けど、ここに来る前にバーテンさんが言ってたように――人は理屈じゃない。
正論だけで動かせるほど出来た生き物ではない、先輩はそれを分かっているのだろうか?
「無論、これだけでは信を得られまい。何せ言葉だけなのだからな。ゆえに……」
言うや裏瀬くんの右太腿に巻かれてあったホルスターに手を伸ばす。
そこには刃渡り三十cmほどのナイフが収められていた。
江古田達に使うつもりだったであろうそれを一体何に――――
「――――行動で誠意を示そう」
刹那、紅い華が咲く。
桐条先輩が自分の左手の甲を刺したと理解するのが一瞬遅れた。
「ッッ……! これを以って誠意とさせてくれないか? どうか落ち着いて欲しい」
「――――」
驚きに目を見開いていた裏瀬くんだが、すぐにその顔を手で覆った。
「……ふぅ、アンタ意外と過激なんだな」
「君程ではない。それで、どうだろうか? 望むならばもう片方も貫くが……生憎ナイフを握れそうにない。君がしてくれ」
桐条先輩の目はどこまでも真剣で、この場に居る誰よりも裏瀬くんに近かった。
一般人とは隔絶した域でものを考える人間が居る。
それは俗に天才なんて言葉で評されるが、二人は正にそれだ。
常人の理解出来ない範囲で分かり
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