XI
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土曜日、日曜日と裏瀬くんは寮に顔を出さなかった。
連絡をしてみても不通。
桐条先輩らに事情を話して今日の昼に江古田先生に事情を聞きに行ったのだが……
江古田先生、そして件の女生徒の一人である森山さんは学校に来ていなかった。
前者からは欠勤の連絡が来たそうだけど――――違う。
恐らくは、裏瀬くんが何かをしたのだ。
土曜の夜に別れた時の彼は酷く怖い顔をしていた。
よっぽど山岸さんって子のことが大事なのだろう。
…………こんな時に嫉妬してしまう自分が嫌い。
「だーかーらー……今、裏瀬さん忙しいんすよ。桐条だか何だか知らないけど、こればっかりはねえ」
「話を通して貰えれば分かる。彼に言伝を頼む、山岸風花の件で来たと」
裏瀬くんの暴走を危惧した私達は午後からの授業をサボって開店前のエスカペイドへ来ていた。
それで桐条先輩がバーテンさんに話をつけているんだけど……
「忙しい、そう言ってるでしょ?」
前の時は怯んだフリだったようで、バーテンさんは頑として拒否の姿勢を示している。
「今のあの人、キレてんでね。マジで遊びがないんだ。お分かり?」
怒りで思考が鈍っているのではない。
むしろその逆で思考が純化していると言うことだろうか?
「それに、アンタが居るのが特にマズイ」
「私が?」
何故桐条先輩を指名されたのか、本人も疑問なようで困惑している。
「普段なら割と他人の意を汲んで口出しとかはしないり理解を示すタイプだけど、さっきも言った通り遊びがない」
言い方を変えるならば余裕がないと言うことだろう。
それほどまでに切迫している彼は見たことがない。
「そんな時に顔出して見ろよ――――アンタの驕りで余計に火を注いじまう」
「驕り、だと?」
桐条の先輩の声が剣呑さを帯びる。
一体どう言うことかと他の人を見るけれど皆も渡しと同じように困惑しているようだ。
「怪談の件、アンタも気になってたんだろ? だから岳羽ちゃんを焚き付けたりした。
僅かな引っ掛かりがあったってのは否定出来ない。となるともう、驕りと言う他ないだろう」
呆れたようにバーテンさんが唇を吊り上げる。
「俺らでもかなりのことは調べられた。たかがチンピラだぜ? じゃあ桐条ならどうよ?
マンパワー、資金、比べるべくもない。それをフル活用してりゃ、二日の時点で調べはついてたはずだ」
一日に怪談の話が出た、そこで桐条が動けば発覚は早かったはずだと指摘する。
「……!」
「裏瀬さんは気になると思えば即行動の人だ。そこに手抜きは一切ない。今回の件はちょっとアレだがね」
…………確かにそうだ。
桐条先輩ならばもっと有効な手を早くに打てたはずだ。
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