第二十九話「暗躍」
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ーーー【エクスカリバー本部・第5研究室】
ヴェールマンは第5研究室の前に立っていた。アリアへの報告のためだ。
ドアをノックする。
…………………返事はない。
『開いてるよ』
ドアの向こうから声が聞こえた。ヴェールマンはドアを開けて研究室に入る。
「……やぁ。研究の邪魔をしてしまったかな?」
「いいえ。そろそろ来る頃だと思っていたわ」
にっこりと笑顔を浮かべるアリア。対してヴェールマンは無表情を貫く。
ヴェールマンがアリアに報告することなど、たった一つしかない。
「君の生み出した覚醒兵が……次の作戦以降の実用化が決定したそうだ」
それを聞いたアリアは、これまでにない程の笑顔を見せた。
「そう………フフフッ…………覚醒兵技術がとうとう認められたってことね………」
「………………………………」
ヴェールマンは、正直喜べそうにもない心境だった。
確かに覚醒兵は強力な"戦力"として期待ができるだろう。事実、突然変異種を武器無しで制圧する
という荒業をやってのけたのだから。
しかし、そのために兵士から本来の手足を奪い、ウイルスを体内に注ぐ。機械の義手義足を強いる。
そんなことが許されてもいいのだろうか?
一歩間違えば、非人道的な実験と言われてもおかしくはないのではないか?
「君は………この覚醒兵がエクスカリバーの新たな希望だと…………そう思っているのか?」
「…………………どうして?」
「私も覚醒兵が大きな戦力になるとは思っている。しかし、覚醒兵部隊は今現在、2人しかいない。
実用化されるということは……また志願者が出れば同じように手足を落としてウイルスを注ぐのか?
私にはどうしても…………それが人道的だとは思えない」
しばらくの間続く沈黙。
「………………………ねぇ、ヴェールマン……………」
「貴方みたいな合理的な人が」
「そんな綺麗事を言うなんてね」
一瞬、寒気がした。
ヴェールマンはこの時初めて、アリアの"心の闇の一端"を見た。
一体、いつからだ。
いつから彼女の心は………正義は………
……………………歪んでしまったのだろうか。
ーーー【エクスカリバー本部・第6格納庫前通路】
一人の兵士が、整備中の爆撃機をぼんやりと眺めていた。
「何してるんだ?」
爆撃機を眺めていた兵士に、タガートが声をかける。
「ぼんやりと爆撃機眺めてました」
「そうか…
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