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空を駆ける姫御子
第八話 〜花言葉 〜Language of flowers〜 -終花-【暁 Ver】
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きますよ。そのまま降ろさなくてもいいくらいです。それと今日、ダウランドさんから頂いた()に関する資料で気が付いたことがあります。ティアナさんが消息を絶った事との関連性はわかりませんが、放置するわけにはいきません。それに……」

 黒のレザージャケットを着込む。

『それに?』

「……偶には兄らしい事をしてやらないと嫌われてしまいますから」

 ぶっきらぼうに、そう言った。ボブには照れ隠しにしか思えなかったが、それを告げるのは野暮というものだろう。

『了解したよ』

「ダウランドさんにも連絡を。バークリーで経営している医療施設を幾つか……そうですね、秘匿性が高くて腕の良い女性医師がいるところを。いっその事、産婦人科でも構いません。いつでも受け入れられる準備をしておくようにと。……出来れば、六課の方よりも先に保護したいですね」

『桐生……それは』

 モニタの中でボブが、息をのんだ。

「あくまで万が一に備えて、です」

 端末が繋がる。スクリーンの中には泣き腫らして真っ赤な目をした彼女が。良く見れば鼻も赤くて鼻水が出ている。桐生はそれを見て少しだけ困ったように笑うと、表情を引き締めた。モニタの前に立つ桐生の姿が、電波状況の悪いテレビ画像のように歪んだかと思うと一瞬にして吸い込まれるように端末の中へと消えていった。






 アスナは端末のスクリーンから溢れ出した砂鉄のように黒い粒子が、兄の姿に再構成されるのを確認すると泣きながら桐生の胸に飛び込んだ。桐生は愛おしげに彼女の髪を梳くと無言でハンカチを差し出す。アスナはそれを受け取るとぐしぐしと涙を拭いた後、鼻をかんだ。桐生は苦笑を浮かべながらアスナの目を真っ直ぐに見つめると指示を出す。

「ティアナさんを助けに行きましょう。スバルさんを呼んできて下さい、誰にも知られずに。それと……ティアナさんが普段身につけていたものがあれば持ってくるようにと」

 アスナは桐生の指示に頷くと風のように部屋を飛び出していった。我が妹ながら殺風景な部屋に苦笑いをしながら暫く待っていると、スバルがアスナと一緒に部屋へ飛び込んできた。……その手に下着を握りしめて。

「……スバルさん?」

「洗ってません!」

 余計に悪い。アスナと同年代である少女の下着を握りしめている自分を桐生は想像する。……ただの変質者だ。アスナの冷たい視線に、若干腰を引きながら下着以外のものをお願いした。再び戻ってきたスバルの手に握られていたのは、ティアナが普段髪を結わえているリボンだった。なぜ最初からこちらを持ってこなかったのだろうと思いつつも受け取る。

「さて、これから外へ出ます。私の体の何処でも良いので触れて下さい。デバイスを持ったまま外へ出てしまうと……行動が
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