第八話 〜花言葉 〜Language of flowers〜 -終花-【暁 Ver】
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黙々と歩く──── 乾いた発砲音。桐生が足を止めたのは刹那。振り返ることなく歩み出す。途中で墓参りに行くのであろう親子とすれ違った。母親の手を小さな手で握りしめている少女に、まだ小さかった頃の『彼女』の姿が重なる。だけどそれも一瞬で。そうして桐生は……彼と同じ目をした黒い男は、桜色のベールに包まれながら消えていった。
──── ねぇ、ママ。さっきのおじさんないてたよ
──── そうね。ここは大切な誰かに会う場所でもあるし……お別れする場所でもあるから
ティアが消息を絶ってから六時間が経過している。探そうにもアンカーガンの反応も無く追跡出来ない。念話にも応答しない。八神部隊長の命令で、なのはさんとフェイト執務官がスクランブル。一瞬でバリアジャケットを纏った二人は、シグナム副隊長とヴィータ副隊長と共に大空へと飛び立っていった。
待機命令を受けたあたしはあろう事か、八神部隊長へ掴みかかってしまった。到底納得できなかったからだ。掴みかかったあたしへ八神部隊長は眉一つ動かさずにこう言った。これが理由だ、と。冷静じゃないのは自分でもよくわかっている。今すぐにでもあたしだって飛び出していきたい。だけど、あたしを踏み止まらせていたのは……アスナだった。彼女は、女子寮の玄関の前で立ち尽くしたまま動かないのだ。
「アスナ……雨降ってきたよ。中に入ろ?」
彼女は子供のように首を振る。雨に濡れた髪が飛沫を落とした。
「風邪引いちゃうよ」
彼女は普段何の感情も伺わせない瞳に少しだけ熱を乗せながら言った。
「……ティアナをまってる」
声を上げて泣きそうになる。だったら中で待とう……とは言えなかった。こうなってしまうとアスナは、梃子でも動かなくなる。零れ落ちそうになる涙を誤魔化すように意味も無く空を見上げた。
「……ティアの馬鹿」
あたしのその呟きは鈍色の空へ吸い込まれ消えていった。結局あたし達は、体調がまだ思わしくないアイナさんに説得されるまで雨の中を立ち尽くしていた。
フラッターから送られてくるのは……久しく聞いた事の無かった彼女の泣き声。大切な友人の名を呼びながら声を押し殺して泣いている。桐生はそれを無表情に聞いていた。
『桐生。血が出てるよ』
ボブに指摘され右手を見ると手のひらから血が出ている。強く握りすぎたようだ。それも直ぐに消えていく。
「……ボブ。アスナに端末を立ち上げて、こちらと繋げるように言って下さい」
桐生はそれだけ告げると手早く着替え始めた。
『アスナ以外の人間がどうなってもかまわないんじゃなかったのかい?』
「……そんなもの、アスナの為だったらいくらでも棚に上げてお
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