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空を駆ける姫御子
第八話 〜花言葉 〜Language of flowers〜 -終花-【暁 Ver】
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たいですね

「思いつきの即興だったからこそ、気が付いたんです。最初はただの違和感でした。ですが──── 変わった言い回しをする人だとしても、あの言い回しはやはりおかしいんですよ。それが、ずっと引っかかっていたんです。エヴァット氏も言ってたじゃないですか。あなたは普段の言葉遣いには厳しいと」

 桐生は肩に乗った花びらを優しく払いながら、尚も続ける。

「そして、調べて貰ったあなたに関する報告書を読んで気が付いたこともあります。……スギタさん。あなたは普段、人に対して名乗る時は『サイト・スギタ』とは言っていませんよね? 何故か『スギタ・サイト』です」

「偶々、じゃないかな」

「そうでしょうか? 現にあなたは先程『スギタ・サイト』と名乗りましたよ」

 夏場だというのにまるで春一番のような強い風が、桜の花びらを舞い上げる。その所為で、スギタの表情はわからない。

「日本人の(さが)なんでしょうかね。私もラストネームが先に来るのは未だに慣れません。書類などにサインする時はミッドの慣習に従いますが。それなのに、何故あの時に限って変えたんでしょうね」

 桜色の風が止んだ時。見えたスギタの表情は少し、楽しげだった。スギタは先を促すように頷いて見せる。

「あなたの名前をじっと見つめていたら唐突に思いつきました。恐らくあんな閃きは二度とないでしょうね。……『たぬき言葉』ですよね? 『沙汰』を『抜く』んだ、あなたの名前から。サイト・スギタから、()()を抜くと、『イト・スギ』……糸杉。糸杉の花言葉は、『死・哀悼・絶望』」

 スギタは笑っていた。本当に楽しそうに。悪戯が成功した子供のように。

「うん。その通りだよ。即興にしては上手く出来たと思ったんだけど。まさか気がつく人がいるとは思わなかった。……糸杉の花言葉は僕にぴったりだと思わないかい?」

 だからこそ。桐生は気が付いてしまったのだ。

「何故、あのような真似を?」

「ただの悪戯さ。強いて理由を挙げるとすれば……エヴァットに対する嫌がらせかな?」

 スギタは、尤もあの男はまるで気がつかなかったけどと付け加えた。

「なぜティアナさんを巻き込んだんですか?」

 桐生にそう問いかけられたスギタは、それまで楽しげだった表情を消した。

「……彼女には申し訳ない事をしたと思っている。彼女には()()に来る途中だったのを見られてしまっていたんだ。あたし()と言っていたから、三人で遊びに来ていたのかもね。僕を見かけたのは彼女だけだったようだけど」

 そう言ったスギタは、恐らく弟であるカイトとその彼女……エミリーの墓標に視線を移した。桐生もつられ目をやると片方には紫苑が供えられ、もう片方には白い薔薇。両方
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