第八話 〜花言葉 〜Language of flowers〜 -終花-【暁 Ver】
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って話を聞いていた桐生が口を挟む。
「服用させられた女性を調べればわかるのでは?」
「……無理、だろうね。ナノマシンは役割を終えると、排泄物と一緒に体外へ排出されるらしいね。Heavens Doorも同じで、約六時間後には体外へ排出されてしまう。恐らく使われたという自覚もないだろうしね。なにより……訴える女性が稀だ。彼女もそうだったよ。丸二日、行方がわからなくて。ふらっと僕たちの前に現れた一週間後に……カイトと一緒に死んでいるのを僕が見つけた。二人一緒に手をつないでいてね。最初は眠っているのかと思ったくらいだ」
スギタは目を閉じその光景を思い出しているのか、唇を噛んだ。
「……データの中からエミリーとエヴァットの情報を削除した。その時の僕の気持ちがわかるかい? 狂喜したよ。カイトとエミリーが死んでから惰性のように生きて、いつ二人のところへ行こうかそればかりを考えていた僕に訪れた好機。その時だけは、いもしない神様に感謝した。カイトはその方法を選ばず、僕は選んだ。ただ、それだけの話さ」
──── 兄貴、兄貴、聞いてくれよ! えぇとな、彼女が出来た
「とても良い子だったよ。大人しくて控えめで……だけど笑うと向日葵みたいだった。本当にカイトにはもったいないくらい。幼い頃、弟と一緒にこの世界に来て、僕たちを保護してくれた管理局員に引き取られて。感謝はしてるけど、どことなく引け目を感じていた。彼女の御陰でカイトも随分救われた。勿論僕も。だからこそ」
スギタは鋭く桐生を射貫く──── 許せるものか。
「僕は間違ってるかい? 桐生さん」
彼は……自分とよく似ていると桐生は思った。境遇も大切な肉親がいる事も。桐生もそうだから。彼はもう一人の自分だ。たまたま立場が違っていただけなのだ。愛しい人は彼の手のひらから零れ落ちて、桐生の手はまだ縋るように握りしめている。『彼女』が自分の手のひらから、するりと零れ落ちたら──── 自分は一体どうなるのだろう。桐生はそこまで考えたところで、悪夢を振り払うかのように頭を振った。
「私も二つほどお聞きしたい事があります」
桐生は彼の問いには答えなかった。答えられなかった。自分はその答えを持ち合わせてはいないし、何よりどんな答えを返しても彼にはもう、意味など無いのだから。
「どうぞ」
スギタは特に不満に思っている様子もなく淡々と返した。
「あの時、なぜあの様な会話を?」
スギタは訝しげに首を傾げていたが、やっと思い至ったように桐生へと答える。口調も心做しか明るい。
「あの時の会話って……もしかして、アレに気がついたのかい? 殆ど思いつきの即興だったんだけどな」
──── 本当に正気の沙汰とは思えませんよ……抜いて見てみ
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