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弱者の足掻き
九話 「小さな一歩」
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う。俺の父親は死んでるよ。見たのは一緒に住んでる親戚のおっさんで、俺の生まれは水の国だ」
「そうなんだ……ゴメン」
「別にいい」

 そう言うと同時に筆が止まり、絵が描き終わる。
 ふう、と一息つく。
 そういや、ここんとこ飯時以外であんましおっさんと会わなくなったな。ふとそう思う。

「白はまあ、結構近い景色見たことあるだろ」
「そうですね。ただ、霧というよりは雪のイメージ強いです」
「白ちゃんも水の国なの?」
「はい。イツキさんとは違う場所ですが」

 そこまで大きな大仰なものではない。色の塗り分けもなし。数分程度で描き終わるモノでしかない。
 絵を描いたせいだろう。頭痛は穏やかになりながらも消えていかず泥となり未だ残っている。
ああ、頭が重い。

「水の国にはこんな風景があるんだ。一回見てみたいな」
「……見たいと思うならここ数年のうちに実行したほうがいい」
「何で?」
「まあ、あれだ。思い立ったらすぐ動いたほうがいいからだ」

 濁していう俺の言葉に「ふうん」と少女は軽く流す。
 「貸して」と言われ少女に筆を渡す。
 さらさら、と少女は絵を描く。

「花か」
「どことなく味がありますね。上手です」
「ありがと。けど難しいね」

 筆だからな。普通とは扱いが違う。だが絵を描きたいと最初に言い出しただけはあり中々に形になっている。
 そんな事を思っていると、つんつん、と背中を叩かれる。白だ。

「白、何か――――」
「こぅら! 何しとるかガキども!!」

 巻き舌の怒号が飛ぶ。池ジジイである。いつの間に来ていやがった。
 ふと見ればカジ少年たちは消えている。あのクソ野郎どもが。
 水ぶっかけて証拠隠滅の時間も惜しい。そもそもクソ野郎どもの分が残っている。
奴らへの仕返しを考えつつ俺たちは向かってくるジジイから走って逃げ出した。












「あの、手伝いましょうか」
「いや、いい」

 そう言って白に軽く手を振る。
 夕暮れ時の自宅。当番制により夕食の準備をしているところだ。
 白の言葉は未だ完治していない左親指のことだろう。
 医者に見せた結果全治二週間ほどと言われた脱臼。損傷部位にチャクラを集中し治癒速度を上げているからそれよりはずっと早くなるだろう。あれから日にちも経っているし後二日もあれば治るはず。だけどまあ、不便なことには変わりない。
 だが料理くらいは一人で出来る。

 適当に肉を刻んで野菜ブチ込んでバター落として炒めて醤油垂らす。
 魚の骨が入った煮立ったお湯に粉末椎茸ドーン。ワカメ突っ込んで豆腐突っ込んで味噌といて火を落とす。
 魚は内蔵取って塩揉みこんで炎に翳して放置。
 コメは炊いている。
 牛
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