第三章
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第三章
「そんなのよ、やらせるかよ」
「そう。じゃあ乗るのね」
「当たり前だ」
はっきりと言い返してやった。俺にも意地ってやつがある。その意地がこの女の全てを見て味わってやる、そう俺に告げていた。多分に欲望ってやつだったが。
「この勝負、受けるぜ」
「それじゃあこれも勝負ね」
「そうさ、勝負だ」
また売り言葉に買い言葉で。俺は言ってやった。
「五時間だな」
「キスからね。いいハンデでしょ」
「訂正するんだな」
今度は俺が不敵に笑って言ってやった。言う言葉は。
「最初から数えて五時間だ」
「じゃあ今から三時間もないけれど。いいのかしら」
「充分だな」
敵意を丸出しにして睨んでやった。その意地ってやつで。
「わかったな。じゃあよ」
「わかったわ。じゃあその五時間で」
「そうさ、やってやる」
そう言ってまた勝負に入った。勝負はまた俺の勝ちで何とかキスまでこじつけた。これで五時間。しかしよく考えれば、どうにも時間がない。
「もう真夜中よ」
「それがどうしたんだよ」
「私帰るわ」
急に気紛れでこう言ってきた。
「遅いしね」
「遅いっておい」
俺は今の言葉に思わず抗議した。
「今更そんなこと言うのかよ」
「じゃあどうしろって言うのよ」
ふてぶてしい感じで俺に言い返してきた。
「それなら」
「それならってな」
俺はまた言い返した。
「まだ五時間でな」
「もう五時間よ」
俺の言葉に口を尖らせてきた。
「とにかく今日はこれでお仕舞いよ。いいわね」
「ちっ、もうかよ」
「そうよ、もうなの」
俺の言葉を繰り返してきた。憎らしいことに。
「わかったわね」
「じゃあ続きはホテルでだな」
「何馬鹿なこと言ってるのよ」
それもお断りときた。また随分お高いことだ。
「それもなしよ」
「じゃああれか」
俺は皮肉をこれまでになくたっぷりと込めて女に言ってやった。もうこっちも完全に切れそうになった。実際に切れないのが自分でも不思議だった。
「これで終わりかよ」
「また明日ね」
「土曜。続きか?」
「そうよ、また夜に」
訳のわからないことを言いやがる。心からそう思った。
「そうかよ。で、場所は?」
「同じバーでね」
そう場所を言ってきた。
「それでいいわよね」
「ああ、いいさ」
不満たらたらだがそれに頷いてやった。
「それでな」
「ええ。それじゃあまたね」
何か何処までも自分勝手に別れを告げてきた。
「明日ね」
「それで明日来るのかよ」
「私は嘘は言わないわ」
どうだか。その言葉自体が嘘に思えた。
「安心していいわよ」
「じゃあ安心しておくさ」
相変わらず売り言葉に買い言葉の調子で言ってやった。投げやりさも含めて。
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