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GGO編ーファントム・バレット編ー
59.激戦
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すると、遥か彼方から届く、微小な振動。誰かがものすごい速度で走っている。死銃ーーではない。方向は南西。これは《闇風》だ。
だが、闇風はシノンのターゲットだ。彼女が止めてくれる。意識から、背後の足音を消し去る。

俺は直感に従って振り向き、洞窟の枝道から無音で忍び寄る影を見つけたのだ。この感覚を俺は知っている。ラフコフの首領《PoH》ではない。奴はあの場にいなかった。だから、幹部級の誰かだ。針のように細長い剣《エストック》が得意な男だ。刃を持たず、貫くことに特化した武器。

俺は、あいつを殺したのだったか?いや、違う。HPを半減させたところで、あいつは仲間にスイッチさせ、後ろへと引っ込んだ。
去り際、俺に何かを囁いていったはずだ。

『.....キリト。お前は、あとで、ちゃんと殺す』

その口調。その気配。フードの奥で光っていた、やけに赤い二つの眼。

俺は両眼を見開いた。
砂漠の彼方、真東からやや北にずれたサボテンの下で、小さな光が瞬いた。

体を右に傾ける。そしてさっきまで顔があった位置に高速で回転する銃弾が背後へと抜けた。


「お.....おおおっ!!」

咆哮とともに俺は砂を蹴った。




ーー速い!!

スコープに捉えた《闇風》だが、その疾駆は予想を超えたスピードだった。極めたダッシュスキル。小柄な体を包み込む最低限のプロテクター。細身のM900Aを携えた両手と、前傾した上体。まるで《忍者》だ。そのうえ一切止まらない。

狙撃手にとって停止時間が最大のチャンス。
だが闇風は、オブジェクトを掩体に利用しつつも、一瞬たりとも速度を緩めないのだ。

(.....どうする。動きを予測し、先読みして撃つか)

だが、闇風のダッシュは一直線ではない。一撃で仕留めない限り、二発目の狙撃は《弾道予測線》を与えてしまうのだ。

迷った。だがその迷いは、バギーの車上で感じたような躊躇いまみれのものではなかった。頬を付けたへカートの滑らかなウッドストックの感触と、私をただ信じ、闇風に背を向けたまま立っているはずの少年と姿を消した謎の言葉を残した少年が、力をくれる。

.....ダッシュ中の闇風を、いちかばちかで撃つべきじゃない。

撃つ時は、絶対の確信がなければならない。闇風は、キリトをM900Aの射程に収める前にたった一度止まる。その可能性がある。ならばそれを、ぎりぎりまで待つのだ。

藍色の忍者は、すでにキリトから一キロ以内にまで接近している。だがキリトが背中を見せたまま動かなければ、自分に気づいてないと判断し、百メートルレンジまで近づこうとする気だろう。

(そこまでは、私も我慢する。だからあなたも耐えて、キリト。私を信じて)

その状態で、どれだけの時間が経過したの
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