第二章 [ 神 鳴 ]
二十二話 会戦の狼煙
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そこには一番奥の席に座る女性が一人と数人の神がいた。
「貴様が洩矢の使いか」
奥に座っている女性が僕にそう問いかける。
「はいそうです。御身が八坂神奈子様で在らせられますか?」
「そうだ、私が八坂神奈子だ」
紫がかかった青いセミロングの髪。力強さが宿った紅い双眸で僕を見つめていた。白い長袖の上に赤い半袖の服を着て臙脂色のロングスカートを穿いている。
存在感でいえば諏訪子に引けをとらない。まさかこれ程だとは思わなかった。
「さて、それでは洩矢の言葉とやらを聞かせてもらえるか?」
神奈子は頬杖をつきながら僕の言葉を待っている。
「分かりました、それでは『汝らの要求、誠に遺憾なり。我らは暴虐の軍勢には屈さぬ、正々堂々と正面より汝らを打ち砕かん。悪逆の徒よ、義は我らに在り』以上です」
「「「「 ワハハハハハハハッ!!!! 」」」
僕の発言を聞いた大和の面々は声を上げて笑った。まぁ理由は分かるけど。ちなみに諏訪子の言葉って言うのは嘘だ。僕が適当に考えた。
「アハハハッ!なるほどなるほど、洩矢は中々に冗談が上手いようだな。――――それとも単純に愚か者なのか?」
笑みを浮かべていた神奈子が真顔に戻り僕を視線で射抜く。その瞳に宿るのは間違いなく怒気。期待を裏切られた、たぶんそんな事を考えているはずだ。
普通に考えてこの戦力比で正面から戦うなんて宣言するのは愚者以外の何者でもない。
それを音に聞こえた土着神の頂点と謳われる者が言ったとなると嘲笑と失望が生まれるのは当然だ。
諏訪子には悪いけど作戦の為に愚者になってもらわないといけない。本人にばれたら怒られるだろうな。
「我らの王を侮辱するのは止めて頂きたい!」
僕は怒ったフリをしながら神奈子に言い返す。
「一つ聞くが貴様自身、我々と正面からぶつかり勝利できると思っているのか?」
思っている訳が無い、と正直に言いたいがここは我慢だ。
「我が国には諏訪子様の御加護があります!打ち破れぬ訳がない!」
僕の言葉を聞いて神奈子は興味が失せたというように、
「…そうか、用件は済んだ。帰るがいい」
そう言い残し部屋から出て行った。他の神達もそれに続き部屋には僕一人が残された。これ以上此処にいる理由もないな。そんな事を思いながら大和の陣を後にした。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
部下達に翌朝進軍できるようにと指示を出し、八坂神奈子は陣の中央にある天幕を目指していた。その途中ですれ違う神達は彼女と目を合わせない様にそそくさと去っていく。
彼女が明らかに不機嫌です、という空気を纏っている為だ。機嫌が悪い理
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