第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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「……あうあうあー」
目を覚ませばそこは見慣れたアパートの一室だ。昨日の三十個もの連続任務のお陰で筋肉痛である。いずれも簡単なものではあったが、初日で三十個も任務を仕入れてくるハッカはどうかしているとしか思えない。まあ四分の三くらいはハッカがせかせか働いて片付けていたのだが。
「わんっ」
駆け寄ってくる紅丸は殆どマナの頭の上で昼寝をしていたので特に疲れた様子はない。そんな紅丸を恨めしく思いながらも、マナはベッドから転がり降りて、シノから貰ったお握りを一個、一口で丸呑みした。ドッグフードを紅丸の皿に入れて、自分の皿にも入れ、一緒にぱくぱくと食べ始める。
「さて、いくぞー苺大福」
ジャージを羽織り、紅丸を抱き上げる。そしてマナは、電気も水も止められた家を後にした。
+
「おっはよーございまっす」
遠くに見える三つの影に気の抜けた声で挨拶し、手を振れば「遅いぞマナ!」とハッカが両手を腰にあてる。「そんなこと言ってセンセーどうせ一時間前からここにいたんでしょ……」、とユヅルが溜息をつく。甘いな、とハッカが不敵な笑みを見せた。
「五十三分と29秒前だ!」
秒単位で細かく時間を数えるのがシソ・ハッカだ。これには呆れるしかない。もしかして時空間忍術が得意だから時間に敏感なのかも? と思ったけれど、別にそうでもないようだ。
今日も任務を受けに火影のところへと赴かねばならない。とりあえずついたら火影さまからなんか食べれるもの貰おうかな、と考えながらマナは屋根の上に駆け上がった。
前方をはじめが駆け、その後にユヅル、マナと続く。ハッカの姿はない。手加減の三文字を知らないあの上忍は音も立てずに生徒を置き去りにして駆け去っていった。普通ちょっとスピードを落としてくれたって損にはならないと思うのだが。
「貴様ら、遅いぞ!」
「……センセー、竜とトカゲを比べるのはやめてください」
ユヅルの溜息混じりの突っ込みに、「む! 竜か、それもいいな!」とハッカの顔が子供のように明るく輝きだす。まさに火影室に入ろうとしたその瞬間、中から声が聞こえた。
「大変です、火影さま! ……狐者異一族に伝わる大切な巻き物が盗まれました」
「……なんじゃと!?」
マナが息を呑んだ。マナは狐者異のことについては余り知らされずに育ってきていた――狐者異の様々なことについては、知らない方がいいという火影の判断ゆえだが……。
また火影も、マナが他の子供たちと馴染めるように、アカデミーの図書館などで公開している、狐者異に関する書物は最重要な秘密には触れぬ程度のものとし、他のものは蔵に封印した。それが盗まれたりしたら――
「……狐者異の巻き物奪還任務を命じる! ゲンマ、お前が――」
「ちょおお
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