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空を駆ける姫御子
第五話 〜アスナが機動六課に行くお話【暁 Ver】
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その代わりゴーグル左目の単眼(モノアイ)が低い動作音をたてながら妖しく光る。その光が車のテールランプのように、ゆらりと流れたかと思った時には──── 俺の意識は刈り取られていた。オレが意識を失う最後に思い出したのは。あれほど嫌って捨てたはずのつまらない日常の日々だった。






「……勝っちゃった」

 フェイトが、呆けたようにぽつりと呟いた。何しろ、リミッターが掛かっているとはいえ『SSS』ランクの魔導師を撃墜したのだ。……入隊したばかりのAランク陸士が。しかも相手は強力なレアスキル持ちだ。驚くなと言う方が無理かも知れなかった。八神はやては、当然のような顔をして満足げに笑っている。それを成し遂げた当の本人─── 桐生アスナはゴーグルを額に上げ、こちらに小さくピースしてた。いつもと変わらず無表情ではあったが。






 次の日から、御堂刹那と言う名の魔導師を機動六課で目にすることは二度となかった。単純に異動したなどという理由ではなく、自宅からいなくなったのだ。世間一般で言うところの、失踪だ。それを知ったのは、スバルやアスナと昔のように三人で食事をしていた時だった。模擬戦から三日後のことだ。

 彼の自宅は蛻の殻で、意外なほど簡素な部屋だったという話だ。必要最低限な物しかない部屋と、何も置かれていない机に八神部隊長達と一緒に撮った写真だけが飾られていたという。八神部隊長達は多くを語ろうとしないし、あたし達は六課に来てから会っただけで何も知らない。彼がどんな人物で、胸の内に何を抱えていたかなど知る由もない。冷たいようだが少なくとも、あたしにとっては限りなく他人事だった。

 だが、この失踪事件が。遠くない未来に遭遇することになる事件と深く関わっていることなど、その時のあたし達は想像もしていなかったのだ。ミッドチルダの未来と、六課の存亡をかけたあの事件と。







 〜アスナが機動六課に行くお話 了

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