第五話 〜アスナが機動六課に行くお話【暁 Ver】
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のに。なぜ──── 今になって。懐かしい友人である『彼女』に毒づきたくなるのを、なけなしの精神力で何とか抑えながらもう一度モニターに映し出された文字を見る。
【カグラザカアスナ、ダ】
間違いない──── 自分と同じ転生者だ。桐生がその『男』を不審に思ったのは、八神はやてから渡された資料を見ていた時だった。青い瞳に銀髪と中性的な顔立ち。浮世離れした名前。はやての話によれば、彼女達の幼馴染みで彼女達を軽く凌駕する強大な魔力の持ち主だという。更には数え切れないほどのレアスキルまで使いこなすという天才。このような『人間』を桐生が不審に思わないわけがなかったのだ。桐生自身、積極的に動くつもりはなかったが、警戒するに越したことはないだろうと結論づけていた。
『御堂刹那』は混乱している心情を誰にも悟られまいと必死に平静を装っていた。
十年前、交通事故で死んだオレは『神』と名乗る巫山戯た女に出会った。死因は間違いだったとか、わけのわからん事をぬかしたんでちょっと怒鳴りつけてやったら、ホイホイオレの要求を聞きやがった。『力』を貰い顔を変えて、以前から考えていた名前に変えた。学校もつまらなかったし、漫画やアニメを見てた方が楽しかった。心が躍った。『主人公』になれるんだ。毎日つまらない学校に行くこともないし、すれ違いざまに笑われることもないんだ。魔法なんて力も、憧れた技も思う存分振るえる。
だけど、何も変わらなかった。そう、何一つ上手くいった試しはなかった。誰もオレに感謝しない。誰もオレを尊敬しない。誰もオレに憧れない。何も──── オレの世界は変わらない。
「そうかぁ、あったかぁ。……ん、ありがとうな」
八神はやては本局からの連絡に安堵の溜息をついた。部隊長室にある椅子に体を預ける。あの日、桐生は確かに日本語で話しかけた。恐らくは次元漂流者なのだ。管理外世界である地球から『ミッドチルダ』への移動手段は──── 無い。そうなれば、管理局法に基づいて保護した上で、然るべき処置をしなければならない。はやては、半ば祈るような気持ちで本局からの連絡を待っていたが、桐生とアスナの戸籍情報は──── 彼女の不安を打ち消すかのように存在した。はやては本局から送られてきた二人の戸籍情報をモニターで確認しながら、不思議そうに呟いた。
「何で、普段名のっとる名前と、戸籍上の名前が違うんやろ?」
【アスナ・B・桐生】
この『世界』へ来てから一年ほどが過ぎていた。『彼女』が用意してくれたのは、狭くもなく広すぎでもない、二人が暮らしていくには十分なマンションだった。資金はまだあるが、早急に資格などを取得するな
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