第五話 〜アスナが機動六課に行くお話【暁 Ver】
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く抱きついた──── スバルである。
「……いきなりなんだ、このばか。暑苦しいからはなれろ」
「あはは、相変わらず口が悪いよねぇ」
「……はなれろ」
「いーやーだー」
その二人の様子を微笑ましそうに見ていたはやては、後でやれと言わんばかりに手のひらを二度叩いた。
「はいはい。二人ともそこまでにしとき。取りあえず、積もる話はアスナちゃんをみんなに紹介してからや」
「……桐生アスナ。三等陸士」
はやてに連れてこられたロビーにはすでに機動六課の錚々たるメンバーが勢揃いしていた。動物園の珍獣を見るような視線に晒されたアスナは不快な気分になったが、その視線が悪意のないものであることに気付くと落ち着きを取り戻した。はやてに促されるまま、自分の名前と階級を呟くように告げると、もう言うべき事はないとばかりに貝のように押し黙った。
ティアナとスバルは苦笑しており、他のメンバーは困惑気味である。そこにはやてが助け船を出した。
「アスナちゃんは、ちょう大人しい子でな。人見知りするもんやから誤解されやすいけど、気にせんといて。いっぺん除隊しとるから一番下の三等陸士やけども、訓練校在学中は無敗で近接格闘戦のスペシャリストや。みんな仲良うしたってな」
はやてがそう言い終えると、最初は困惑気味だった彼女たちから拍手が巻き起こった。こうして桐生アスナは、彼女にとって大切な人達になるであろう仲間達の笑顔と拍手で迎えられ──── 機動六課の一員となった。
そんな中、アスナの瞳は一人の男を捕らえていた。正確にはアスナの胸に留められている『PINS』──── アスナのデバイスであるフラッターが男の姿を捕らえていた。
「ボブ。今何か呟きましたね。音声は拾えますか?」
『音声は難しい。アスナとの距離があるし、周囲の音が大きすぎる』
フラッターから送られてきた映像に映っている男の表情からは、明らかに困惑が読み取れる。平静を装っているようだが、人の表情を読むことに長けている桐生にはあまり意味がなかった。
「なら、唇の動きをトレースして下さい」
『了解』
自分の嫌な予感が外れていて欲しいと思いながら溜息をつきそうになるのを何とか堪える。だが、こんな嫌な予感がするときは決まって────
『桐生、解析が完了した。最初の一文だ』
モニターに映し出された一文は
【オマエガナンデココニイル】
明らかに、アスナを
『桐生。次の一文だ』
モニターに映し出されたその一文を理解した時、桐生は今度こそ大きな溜息をついた。あれから二十年あまり。その間、唯の一度も『この』ような事態になる気配すら感じられなかったという
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